異常な日本はいつまで経っても賃上げできない 「恐怖の5段活用」で浮き彫りになる日米の違い

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40年ぶりのインフレはアメリカの食卓ももちろん直撃。それでもたった2年ちょっとでアメリカ経済は復活した。一方の日本は、このままだといつまで経っても賃上げできそうもない(写真:ブルームバーグ)

7月26日、IMF(国際通貨基金)が世界経済見通し(WEO)の7月版を公表した。この見通しは年に4回改訂されるが、今回は”Gloomy and More Uncertain”(陰り見え、不透明感増す)という表題で、いかにも不景気そうな内容となった。

「一難去らずにまた一難」、世界経済は「失速寸前」

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

それもそのはず。①新型コロナウイルスによるパンデミック(感染爆発)は3年目になっても終息せず、②40年ぶりのインフレが世界各地で猖獗(しょうけつ)を極め、③アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は全力で金融引き締めに当たっている。

加えて、④ウクライナにおける戦争は開戦から5カ月を過ぎても終結が見通せず、⑤西側諸国が仕掛けた対ロシア制裁はあまり効果を上げていないように見える。筆者はこれを「恐怖の5段活用」と呼んでいるが、まさしく「一難去らずにまた一難」なのである。

今回のWEOによれば、世界経済の成長率は2022年が+3.2%、2023年は+2.9%となり、前回4月に比べてそれぞれ▲0.4ポイント、▲0.7ポイントの下方修正となった。成長率が3%前後ということは、世界経済にとっては「失速寸前」の水準と言えよう。前回の4月分、前々回の1月分と比較してみると、年初から景況感が急速に悪化してきたことがわかるはずだ。

7月 Gloomy and More Uncertain(陰り見え、不透明感増す)
▲3.1%(20)→6.1%(21)→3.2%(22)→2.9%(23)
4月 War Set Back the Global Recovery(戦争が巻き戻す世界の回復)
▲3.1%(20)→6.1%(21)→3.6%(22)→3.6%(23)
1月 Rising Caseloads, A Disrupted Recovery, and Higher Inflation
(感染者増加、回復の途絶と高いインフレ)
▲3.1%(20)→5.9%(21)→4.4%(22)→3.8%(23)

実はこれだけではなく、今回のWEOにはリスクシナリオもついている。すなわち「ウクライナ戦争の激化」「インフレ抑制の困難化」「新興国における債務危機」「コロナの感染再拡大」「地政学的分断」などのリスクが現実化すると、成長率は22年が2.6%、23年は2.0%とさらに低下する、としている。いちいちごもっとも、なのである。

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