「安倍晋三元首相の死」で為替は円高方向に向かう 悪い円安という意識はどこからやって来るのか

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2019年6月のG20で満面の笑みを見せる安倍氏。岸田首相は元首相亡き後、どんな政策をとるのか(写真:ブルームバーグ)

このところの「悪い円安」をめぐる世論の反応には、隔世の感を禁じえない。この国で為替が問題になるときは、いつも「円高」が問題とされてきた。

1985年の「プラザ合意」以降はずっとそうだったし、もっと言えば1971年8月15日のニクソンショック、ブレトンウッズ体制の崩壊に伴う変動相場制への移行直後から、すでにそうであった。

昭和天皇は「円切り上げ」を「評価」した

この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら

当時の日本経済は文字どおり輸出が命であったから、1ドル=360円の固定レートが崩れたことは大ショックであった。時の大蔵大臣、水田三喜男は8月20日に昭和天皇へのご進講のために那須御用邸に伺い、「日本は円高でたいへんなことになっております」と奏上した。

すると陛下からは、こんなご下問があったという。

「円切り上げのことを国内では非常に暗いことのように言っているが、日本円の評価が国際的に高まるのはいいことであると思う。円の力が強くなるということは、日本人の価値が高くなるということではないのか?」

水田は返答に窮したそうである。

実際そのとおりなのである。通貨の価値が上がることは、日本人の労働が高く評価されるということだ。産業界から見れば円高は一大事かもしれないが、国民経済の側に立てばそのほうがずっとよろしい。ゆえに内閣総理大臣や日本銀行総裁は円安論者であっても構わないが、日本国民統合の象徴たる天皇陛下にとっては、円高は嘉すべきことである。

察するに昭和天皇は、浜口雄幸内閣が実施した金解禁の頃に、日銀総裁だった井上準之助あたりから受けた説明が記憶に残っていたのではないだろうか。

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