異常な日本はいつまで経っても賃上げできない 「恐怖の5段活用」で浮き彫りになる日米の違い

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逆に日本の労働市場はどうだったか。労働力調査を見ると、コロナ後の失業率はいちばん上がったときでも3.1%止まり。直近では2.6%であるから、変化は非常に小さかった。

それ自体は結構なことであるけれども、これで企業が賃上げできるかと言えばそれは怪しい。現在の雇用は、雇用調整助成金や「ゼロゼロ融資」によって人工的にカサ上げされたものだ。つまり経営基盤が脆弱な企業が多く生き残っているのである。いくら政府が賃上げを要請したところで、彼らもない袖は振れない。この間、日本企業と働き手は、以前と同じ仕事を愚直にやっているだけだからだ。

労働者を守ったアメリカ、企業を守りすぎた日本

つまり日米の政策の違いは、アメリカは労働者を守り、日本は企業を守ったということになる。アメリカはもう労働者を守る必要がない。ゆえに経済対策は打ち止めだ。

日本はまだ企業を守っているけれども、いつかは平常モードに戻さなければならない。雇調金制度は6月末で切れるところ、9月までの延長となった。しかるにこんな急場しのぎの政策を、3年も続けるのは異常なことではないだろうか。

翻ってアメリカのような「スパルタ式」の対応が、日本でできるかといえばそれは無理だろう。なにしろ先方は、7月28日時点でコロナにより102万人もの死者を出している。日本の死者数は3万2000人であるから、根本から対応が違いすぎるのである。

われらが日本社会においては、「恐怖の5段活用」みたいなことになると「安定を守る」ことが金科玉条とされる。まもなく令和5年度(2023年度)予算の概算要求が始まるが、「防衛費と脱・炭素と物価対策費は青天井!」などという声が聞こえてくる。おそらく来年度も、財政支出は大盤振る舞いとなるだろう。

ただし、従来の雇用を守るだけでは限界がある。どこかで経済政策を正常化して、労働移動を前提としたシステムに切り替えていく必要があるのではないか。さもないと世界的な物価上昇下で、「賃上げのできる経済」にはなかなか生まれ変われないと思うのである(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

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