日本が直面する「遅れてきた多宗教社会」の実態 善意だけでは解決できない、移民との摩擦の深層
問題視される中国の宗教弾圧
松本:中国については、私は厳しい見方をしています。彼らはオフィシャルには宗教の自由があると喧伝していますが、習近平体制が言論の自由を封じ込め、さまざまな弾圧を行なっていることは事実です。ウイグルのイスラーム教徒やチベット仏教徒への弾圧は日本でも語られるところです。
キリスト教について申し上げると、中国国内にプロテスタント系の三自愛国教会という組織が存在しますが、これにしても中国共産党のコントロール下に置かれていますからプロパガンダ機関と表現したほうがいい。
フランシスコ前教皇の下、中国と正式な国交を結ぼうとする動きと北京にバチカンの常設の事務所をつくる話が進んでいました。私は基本的にフランシスコ前教皇の政策に好意的でしたが、この件に関しては賛同できませんでした。中国国内に1200万人もいる地下カトリック教徒をほぼ見捨てることになりかねないからです。
中国共産党は政権に忠誠を誓う「中国天主教愛国会」のみを認め、教皇に忠誠を誓うカトリック教会は非公認の「地下教会」で、後者を切り捨てることになりかねない。香港民主化運動に関与し中国当局に拘束されていた陳日君枢機卿が教皇選挙に関与し、中国との関係にはより慎重な教皇レオ14世の選出を後押ししたと言われています。
そのような状況をバチカンが放置した理由として、フランシスコ前教皇がイエズス会出身であることが関係しているとも言われています。遠藤周作が『沈黙』で書いたように、イエズス会はいかなる苦難があろうとも、キリスト教を世界各地に布教することに強い使命感を抱いていました。中国に対して何とか食い込みたい宗教機関にとって、信者の獲得が非常に重要であることは理解できますが、中国共産党に対して妥協しすぎでした。




















