両利きの経営「生産性が下がる」残念な会社の盲点 ハーバードで学ぶパフォーマンスを高める方法

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つまり、探索には深化が必要であり、深化を欠くと探索における優位性を発揮することはできません。その意味で探索と深化は補完的な関係にあるのです。

この補完的な関係をいかにして活用していくのかが両利きの経営を目指すうえで最も重要です。しかし、両利きの経営に関する議論の大半は、組織を分けることや、分けないならば、スーパーマンがいて両方を両立させてしまう、ということを前提としているだけです。すなわち、深化と探索を代替的にとらえるだけであり、両者の補完性を全く考慮に入れていないということに問題があるのです。

「両利き経営の貧困」という表現は、両者の補完的関係を実現するための仕組みを考えていくという発想の欠如、貧困さに言及しています。代替的な関係を重視するあまり、補完的な関係を考慮に入れないところに両利きの経営の失敗の原因があるのです。

バリューベース戦略による補完的関係の追求

戦略とは2つのレバーから構成されます。1つは、WTP(支払意思額)です。WTPは、製品・サービスを購入するために支払ってよいと考える最大限の価格のことです。価格がいかに高くても、WTPがそれ以上に高ければ、顧客は満足します。高価格のブランド製品を購入した顧客が満足しているのは、そのWTPが価格以上に高いからに他なりません。

戦略の課題の1つは、このWTPをいかに高めるかという点にあります。マイケル・ポーターの差別化戦略はこのWTPを高めることを意味します。

戦略の2つのレバーのもう1つは、WTS(売却意思額)です。WTSは、企業に従業員やサプライヤーがその企業のために働いてもよいと考える最低限の報酬のことを意味します。従業員満足度は、実際に受け取る報酬とこのWTSの差額のことです。

従業員を例にとれば、WTSは職場環境の魅力度を高めることで実現されます。たとえば、新卒を対象にしたインターンシップの場合、学生に報酬が支払われないことがあります。それにもかかわらずインターンに学生が応募するのは、かれらのWTSがマイナスになっているからです。無給で働いても、場合によっては実際にお金を支払ってでもインターンで働きたいのです。

それは、インターンで採用されるとその企業に就職できる可能性が高まるからです。あるいはインターンで働いた実績をエントリーシートでアピールすることができるからです。したがって、無給であってもインターンで働くことができれば、かれらは満足することになります。

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