芸人にとって、地方にいながらも一夜にして夢を掴めるのが、賞レースで最も大規模な大会とされる「M-1グランプリ」。
大手事務所とテレビ局のパワーバランスによって売り出し方が変わってくる芸能界において、音楽の賞レースとは違って、自力でジャパニーズドリームを掴み取ることができる場所でもある。
ところが、そんな夢の場所を目の前にしても、なかなかチャンスが掴めない。
「毎年M-1に参加していて、一度3回戦まで行ったことがあるんですけど、まったくウケないんですよ。こっちでウケているのがまったくウケない。単純にネタが少し古いのか、訛りなのか、何の研究もできずに1年に1回行ってスベって帰ってくるのを繰り返している。そこまで発想がズレているとは思わないし、テンポが違うとも思わない。『ウケない理由を突き詰めたい』というシンプルな思いがあります。それが解消されない限り、いつまでたってもスベって終わりの繰り返しです」
「しんとすけ」だけでなく、他の沖縄の芸人も然りだ。
「なんくるないさ」は古きよき言葉だが…
では、なぜ「ウケない理由が解消できない」のか。
沖縄には「なんくるないさ」という古きよき言葉がある。平たく言えば、なんとかなる精神で、くよくよせずなんでもチャレンジしようという意味。しかし「なんくるないさ」で、すべて片付けてしまうことがベストとは限らない。
実際、沖縄では「おこなった事柄に対して、深く検証しようとしない」側面があるのも事実である。仕事面で事業の成果に対して振り返って検証をしようと集まっても、結局深く追求せずに「カリー」と乾杯して「次は頑張ろう」とお茶を濁して終わることも少なくない。
ウチナーンチュ(沖縄出身者)のいい面でもあり悪い面でもある。実は、世の中そう簡単には「なんくるならない」。首里のすけは、それが痛いほどわかった。
相方のしんも、同様なことを言う。
「まず沖縄から全国区になるためには、全国の感覚をわからないといけないと思います。東京の舞台では衣装ひとつにしたって、お金をかけてビシッとつくってかっこいいなと。こういう『細かい部分』がお客さんに伝わって、『このコンビのネタを見てみよう』と思わせることが大事だと感じました」
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