首里のすけは、コンビでの芸を磨きながらも事務所代表として「東京進出」を何度も高らかに掲げた。しかし、周りの反応は冷たかった。
「どうせ冗談で言っているだけだろう」と思われ、しまいには「あまり大きなこと言っていると狼少年、いや狼中年と思われるぞ」と嘘つきのレッテルを貼られたりもした。
「おいおい、30で狼中年かよ。まあ、何もしてない自分が言っても誰も信じてくれないか」と周りの目など気にせず、石野真子のデビュー曲「狼なんか怖くない」をユーチューブでいったん聞いてから心を落ち着かせ、コツコツと実績づくりに集中する。
沖縄の良さを「アレンジ」したことが成功につながった
そして2021年12月下旬、初の事務所総出の東京ライブを開催した。問題は、「わざわざ足を運んできてくれたお客さん」にウケるかどうか。
東京だからといって、変に沖縄の方言や訛りを隠さずに、沖縄感を出せば出すほど、沖縄好きの人にプラスに働く作用が生まれることを念頭に舞台構成した。
沖縄の芸人は自覚せずとも、必ず「訛り」や独特な「言い回し」が言葉の端々にあらわれ、「伝わりづらさ」を生かした独特の「間」で笑いを起こす。
だから余すことなく、沖縄の地名・琉球舞踊・三線・ウチカビなど、沖縄独自文化をネタにして、大爆笑をさらった。
東京仕様に仕上げるのではなく、沖縄の良さをうまくアレンジしたことが、大成功につながった。
地方にいて全国をめざす一番の懸念点は、挑戦もせずに、はなっから中央には勝てないと観念している感が少なからずあることだ。
この負け犬根性を払拭するには、どうしたらいいのか。首里のすけはずっと考えていた。だったら「叶うまで挑めばいい」。単純にして、明瞭だった。
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