世界全体で見ると、65歳超の人の割合は現在の12人に1人から、2050年には6人に1人に膨れ上がる。この年、日本では人口の5人に1人が80歳を超す。アメリカでは、2030年の時点で16~24歳の人口が現在より10%減ると予測されている。
こうした人口構成の変化は、新しい働き方を設計する際に考慮すべき重要な問いを生み出す。日本のような国では、人々が60代、70代、80代になるまで働けるようにするために、何が必要かという問いである。
新しい働き方のモデルの妥当性を考える際に、検討すべき難しい問題が2つある。ひとつは、老いや生産性に関する固定観念にとらわれるあまり、60代以上の人たちの機会を狭めていないかという点。
もうひとつは、新しい働き方のモデルで20代や30代のニーズや願望にばかり目を向け、50代以上の人たちのニーズや願望を軽んじていないかという点だ。
ある年齢でピークに到達する能力はない
私たちは「老いのプロセス」を思い描くとき、肉体と認知能力が急激に減退すると思いがちだ。実際には、私の同僚のアンドリュー・スコットが指摘しているように、寿命が延びれば、健康で生産的に過ごせる日々が長くなる。人生の最後に経験する不健康期間そのものが短くなるわけではないが、人生全体に占める不健康期間の割合は小さくなる。
しかも、年齢を重ねるにつれて、いわゆる「結晶性知能」が育まれていく。結晶性知能とは、長年かけて蓄えられる知見や人的ネットワークや知識や知恵や戦略のこと。
これとは性格が異なるのが、情報処理、記憶保持、演繹的推論を行う能力である「流動性知能」だ。人がどちらのタイプの知的スキルに強みを持っているかは、人生を通じてたえず変わり続ける。
10代後半のときは、計算したり、ものごとのパターンを見出したりするスピードが速いかもしれない。30代には、短期記憶が最も強力な時期を迎えるだろう。
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