日本の中学受験は大変すぎやしないか──。筆者が5年ぶりにシンガポールから帰国して実感したこと、その1つが中学受験の過熱ぶりだ。
著者は日本における「仕事と育児の両立」問題について長く追いかけてきた。
正社員総合職が増えて、育児休業を当たり前にとれるようになったものの、復帰後の両立がままならない。そんな問題を『「育休世代」のジレンマ』で取り上げるなどした後、家族の転勤でシンガポールに転居。5年間、海外で「仕事と教育の両立」の問題について取材し、発信してきた。
今年3月に日本に帰国し、日本で取材・調査しているが、日本の母親たちが子どもの年代ごとにさまざまなジレンマに直面していることを実感する。その1つが中学受験だ。
日本の共働き×受験はどうなっているのか
過酷な中学受験を乗り越えた母親たちに話を聞くと、「ため息」まじりの声を聞くことも少なくない。
「受験が終わって本当にほっとしている」という声もあるが、「中学受験合格でゴールじゃなかった……」「入ってからも大学受験を意識させられ、宿題も膨大」など、複雑な内心もよく聞かれる。
2000年代前半までの教育社会学等の論文では、中学受験をするのは専業主婦の家庭が多く、塾講師と連携した黒子の役割を母親が担う必要性が指摘されてきた(※1)。同じく受験競争が激しいといわれる韓国等でも、塾や習い事を活用するうえでの情報収集やマネジメントに専業主婦の母親たちが時間を割いているとされる(※2)。
そのような中で、少し前まで育休世代の母親たちの懸念は「共働きで中学受験をさせることはできるのだろうか?」というものだった。実際「働きながらの中学受験があまりに大変そうだから、小学校受験を選ぶ」人たちもいる。
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