「共働き×中学受験」も増える過熱感に感じる懸念 「御三家」出身の親世代も驚く"過去とは違う"

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さらに、コロナによる人数制限等の影響もあり、私立中学校などが主催する学校説明会は、予約開始時間直後にアッという間に満席になるほどの人気だ。もはや何の競争なのかもわからない状況が繰り広げられている。

「中学受験」に向け、あおられ、焦らされ、大半の親たちは「そんなに早くから競争させたいわけでもないんだけど」と言いながら子どもを塾に入れ、ひとたび塾に入れると今度は宿題等に追われ、競争に駆り立てられていく。

改めて、なぜ中学受験をするのか

では親たちはどうして、中学受験をさせようと思うのか。

1つは公立不信だ。ある最難関校の1つである男子校に通う中2の男の子の母親は、息子について「能力に凹凸があるタイプで、勉強は得意だけどコミュニケーションは苦手。公立小学校では怒られてばかりだし、習ってないことはやっちゃダメと言われる。それに対して、塾では頑張れば頑張るほど褒めてもらえた」と話す。

出る杭は打たれ、できることをほめてもらえない。管理され、学校が楽しくない。そのまま中学に行けば教師との相性で左右されがちな内申点が高校受験に必須なので心配。このような公立学校への不満が、受験に向かわせている。

もう1つは、「皆がやるから」というものだ。

都内では小学校から公立中学校に進むのが1割以下という地域もあり、「(住んでいる学区では)公立中学校にはいわゆる“できる”子はほとんど進学しないと言われていて、子どもをより良い環境に行かせたいと思った場合に分布の偏りが気になる」(小6女子の母親)という声が出てくる。

アメリカの社会学者のロバート・K・マートンは、根拠のない噂だとしても、皆が信じるとその状況の実現に近づいてしまうことを「予言の自己成就」と呼んだ(※3)。「中高で切磋琢磨できる友達と過ごしてほしい」(高2、中2の母親)と考える親たちの心理の連鎖で、中学受験しないという決断のほうが難しく感じられてしまったりする構造がある。

私立中高一貫校で高校からの募集が減っていること、都立高校に男女別定員制があり女子は男子と同じ点を取っても合格できない可能性が高いなどの制度的課題(報道を受けて段階的に廃止する方向だが)もあり、中学受験という選択肢が都内では広がっている。

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