ただ、小学校受験もまた、各教科の点数以外に多方面にわたって成果を求められる性質があり、決してラクともいえない。
それでも、それを乗り越えて小学校受験成功組となった親子が、スポーツに打ち込んだり、のびのびと小学校時代を過ごしたりしているのを見ると、「中学受験を考えなくていいなんてうらやましい……」となりそうなくらい、今の中学受験をめぐる日本の様相は過酷だ。
「自分が経験した30年前より激化している」
今や共働き家庭の子が中学受験に挑むことは、とくに珍しいことでなくなっている。一方、親自身が中学受験の経験者である家庭ですら言い切るのが「明らかに30年前の自分たちのときよりも、激化している」(親が最難関校の桜蔭・開成出身の夫婦)という話だ。
ある塾の説明会で、このような話を聞いた。
中学受験の最難関校の回答用紙は、10年前は選択肢形式や抜き出し型の問いもあったが、現在は、より思考力が問われる記述式の大問が数問のみとなっている学校もあるという。
学校側は少子化の中で、より力のある生徒を取りたい。そのため、その場でとっさに考える力がどれだけあるかを測ろうと参考書にはない新しいタイプの問題をひねり出したりする。だが、塾は新しい傾向が出てくればそれに対する対策を伝授する。そうして、必然的にやることはどんどん膨らんでいく──。
限られた席を争う「選抜」には、必ず差異化が必要だ。皆が満点を取れば差がつけられない。こうして望むか望まないかにかかわらず、親子が対策を取るほど試験の内容が難しくなる。これはこの連載で見てきたシンガポールとまったく同じだ。
そして、「〇〇塾は小3から入れないと、後からは入れない」などとささやかれ、塾通いが低年齢化している。都内の地区によってはその席の確保も「小2から入れないと」「小1から入れないと」「年長から……」と次々と下がっているという話も聞く。
低学年については、先々の通塾の権利の確保だけが目的で、すぐには通塾しないにもかかわらず、毎月の支払いだけするケースもあるという。
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