具体的にはどういうものかというと、
といった特徴的な行動が挙げられます。
さらに、加害者は「ダメなあなたを 受け入れられるのは、私しかいない」と、自分自身を「唯一の理解者」であるかのように思わせることに長け、相手が自分から離れようとすると、優しい態度に豹変して罪悪感を植えつけ、そこから懐柔されることもあるとのことです。
こうした言動をとられ続けた者は、恐怖による緊張、不安による不眠、湿疹などの身体反応、自尊感情の破綻による判断力低下、無能感や無力感に見舞われる……といった被害を受けることがあり、さらにその状態に麻痺していってしまう可能性もあります。
「身近な人ほどコントロールしやすい」という思い込み
本連載と前連載において、怒りの感情は自分の信ずる「べき論(≒譲れない信念や価値観)」が、自分の目の前で裏切られることが原因となって表れると説明してきました。
モラルハラスメントの加害者がとる言動も、加害者自身の「べき論」を強く叶えようとするからと説明することが可能です。自分の「べき論」をわかってもらいたいけれど、叶えることが困難になれば、叶えようとするあまり罪悪感を失って強硬な手段に出る、さらにエスカレートして相手を傷つけてしまうのです。
さらに夫婦間などの近しい関係の場合、「身近なところにいる人はコントロールしやすい」という思い込みも作用してしまいがちです。人は、感情をより強く出すことで自分を表現しようとし、怒っていることが伝わらないと感じたら、余計に強く怒鳴ります。それは「怒ればなんとかなる」「怒鳴ったほうが相手に響く」と信じているからです。
けれども、「べき論」を怒鳴ることで相手の心が離れていってしまい、離別を選ぶ夫婦や親子も出てくるし、思想や信条の侵害が激化すれば、国同士の戦争につながることさえあるのです。
前連載「フェデラー選手も学んだアンガーマネジメント」の第6回目の投稿では、「高校教諭が自分の担任する教え子の入学式に行かず、自分の息子の入学式に行ったことによる混乱」、「松井選手が甲子園で5打席連続敬遠にあったことによる騒動」から、自分の「べき論」が正しい一方、相手の「べき論」が正しくないと考えるのはワガママにすぎないかもしれないことを説明しました。
これらのように、各個人が正しいと信じる「べき論」は、組織内で歩み寄りによる調整をしなければ、争いが絶えないことになってしまいます。そこで次は、その具体的な調整・解決方法について考えてみましょう。
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