第1回 怒りで、ジダンが失ったもの、フェデラーが得たもの

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私たちは、怒りの感情を抑えきれず、時に人間関係を悪化させ、仕事において大失敗を犯してしまう。そして後悔をする。「あんなことを言わなければよかった」と。
 本連載では、怒りの感情との上手な付き合い方について、スポーツ、恋愛、SNS、職場といった状況別に、いくつかの事例をあげて考察し、私たちの生活に役立てるヒントを探っていく。
 

相手からの挑発に頭突きで返したジダン、ミスの連発にラケットをたたきつけたフェデラー。超一流のアスリート2人は、試合中に湧いた怒りの感情とどう向き合ったのか?

なぜ今、アンガーマネジメントなのか

「アンガーマネジメント」――日本では、まだそれほど浸透していない言葉だが、1970年代にアメリカで始まった、怒りの感情をマネジメントするための心理トレーニング法のことである。

怒りの感情を「マネジメントする」とは、「怒らなくなること」ではなく、怒りの感情と「上手に付き合う」ことを意味している。
達観した宗教家のように、怒りの感情を自分の心から取り除くことは簡単ではない。
 怒りの感情は、「危険から身を守る」という自意識に起因している。
 「危険」とは、身体におよぶこと、自尊心、名誉などであり、これらを守るための怒りは必要な感情である。

つまり、「怒ってはいけない」というメッセージをアンガーマネジメントが発信しているのではない。
 けれども、我を忘れてしまうほどに怒ったり、いつまでもイライラをリセットできなかったりすることが問題言動へと派生することが多いので、「怒りの感情と上手に付き合う」=「アンガーマネジメント」が求められているのである。

アメリカでは、会社員、経営者、教師、政治家、弁護士、スポーツ選手等、様々な職業の人たちがアンガーマネジメントの技術を習得している。

その理由は、
・会社員は、職場でイライラせずに効率的に仕事をするため
・経営者は、怒りにまかせた行動で部下の信頼を失わないため
・教師は、学校で子どもたちへの情操教育のため
・政治家は、怒りを抑えきれずに失態を犯したり、醜態をさらさないため
・弁護士、医師などのストレスの高い仕事の人はストレス対策のため
・スポーツ選手は、試合中の冷静さを保ち、最高のパフォーマンスを発揮するため
などだ。

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