ドゥエックの『「やればできる!」の研究——能力を開花させるマインドセットの力』(草思社)から引用したこれらの例は、生徒たちや意欲的なスポーツ選手など、その他誰が相手であっても、やりとりのあり方についてのまったく新しいアプローチを示唆している。
称賛すべきは努力であって、才能ではないこと。能力が努力によって大きく変えられることを強調すべきだということ。他人にも自分自身にも、挑戦は脅威ではなく学習機会だととらえるよう教えること。失敗は断罪ではなく機会と解釈すべきであること。
優秀な子供にはどんな声かけが効く?
では、課題をたやすくたちまちこなしてしまった生徒はどうほめればいいのか? 苦労一つせずなにかをやりとげてしまった場合は、努力でなく才能をほめるしかないのでは? ドゥエックの助言はこうだ。「そんなときはこう言えばいい。『あらあら、簡単すぎたわね。時間を無駄にしてごめんなさい。本当にためになることをやりましょう』」。
ドゥエックの調査が持つ意味合いはじつに深い。多くの教育者たちは、水準を下げれば生徒に成功体験が与えられ、自尊心を高めてそれが成果を挙げると主張してきた。それこそアメリカやヨーロッパ各地の教育機関が1970年代、80年代のほとんどを通じて掲げていた哲学であり、いまも影響をおよぼしている。
だがこれで、いかに善意から出たことであっても、教育信念としてはこれが生徒をむしばむものだとわかる。「それは生徒の知能を過剰にほめるのとまったく同じ哲学から生まれている」と、ドゥエックは書いている。「だが、そんなのはうまくいかない。水準を下げると、生徒たちはあまり教育を受けずに終わるだけで、しかも簡単な課題で大仰なほめ言葉がもらえると思いこんでしまうのだ」。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら