才能がある人ばかりで固めた大企業の哀れな末路 生得的な能力VS豊富な経験、どちらがより重要か

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エース社員を部署異動させてはいけない本当の理由とは?(写真:metamorworks/PIXTA)
「自分には語学の才能がないから」「ウチの子は数学向きの頭をしていない」「スポーツにはそもそも向いていない」……などと言って、自分や他人の可能性を諦めてしまった経験はないでしょうか。
イギリスの人気ジャーナリストにして、世界的ベストセラー『失敗の科学』『多様性の科学』の著者マシュー・サイドは、それら「人の能力は生まれつき決まっている」論を真っ向から否定。彼の原点となる著作『才能の科学』において、スポーツ・ビジネス・学問・芸術などあらゆる分野を横断しながら、「人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法」を科学的に示しています。
「才能がない」と諦める前に知っておきたい、「成長する人と組織の共通法則」とは? 同書より一部抜粋、再構成して5回連載でお届けします。

「エンロン事件」を招いた2つの原因

2006年10月23日、ジェフリー・スキリングはヒューストンの連邦裁判所の被告席で、エンロンの破綻――近代史においてもっとも絶望的な企業破綻の1つ――で自分が果たした役割についての判決を待っていた。ダークスーツとネクタイを着こなした元CEOは、獄中での生活を予期して険しい表情を浮かべていた。傍らには弁護団が落ちつかない様子で座っていた。

通りのはじから曲がり角のあたりまで、テレビキャスターたちがマイクとイヤフォンをつけて待ち受けていた。新聞記者たちはノートと携帯電話を持って待ちかまえていた。判決を真っ先に聞こうと歩きまわる元エンロン社員(多くは退職金を破綻ですっかり失った)の姿もちらほらと見受けられた。

スキリングの陳述——彼は無実を訴え続けていた——と、エンロンの破綻で人生を台なしにされた多くの人びとの陳述に耳を傾けたあと、判事はスキリングに起立をうながした。

「被告人は、元社員を含む投資家らに対して、エンロンの事業のさまざまな面についてくり返し虚偽報告をしていたことが立証された」と判事は述べて、判決を言いわたした。292か月の実刑。スキリングの再婚相手であり、エンロンの元会社秘書役でもあったレベッカ・カーターは泣きくずれた。

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