「エンロン事件」を招いた2つの原因
2006年10月23日、ジェフリー・スキリングはヒューストンの連邦裁判所の被告席で、エンロンの破綻――近代史においてもっとも絶望的な企業破綻の1つ――で自分が果たした役割についての判決を待っていた。ダークスーツとネクタイを着こなした元CEOは、獄中での生活を予期して険しい表情を浮かべていた。傍らには弁護団が落ちつかない様子で座っていた。
通りのはじから曲がり角のあたりまで、テレビキャスターたちがマイクとイヤフォンをつけて待ち受けていた。新聞記者たちはノートと携帯電話を持って待ちかまえていた。判決を真っ先に聞こうと歩きまわる元エンロン社員(多くは退職金を破綻ですっかり失った)の姿もちらほらと見受けられた。
スキリングの陳述——彼は無実を訴え続けていた——と、エンロンの破綻で人生を台なしにされた多くの人びとの陳述に耳を傾けたあと、判事はスキリングに起立をうながした。
「被告人は、元社員を含む投資家らに対して、エンロンの事業のさまざまな面についてくり返し虚偽報告をしていたことが立証された」と判事は述べて、判決を言いわたした。292か月の実刑。スキリングの再婚相手であり、エンロンの元会社秘書役でもあったレベッカ・カーターは泣きくずれた。
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