64歳元常務が「再就職先」で味わった哀れな末路

偉くなればなるほどアウェー耐性は脆弱化

「塩漬けおじさん」は定年後に失敗しがちです(写真:mits/PIXTA)

「お恥ずかしながら、私、この年になって出社拒否になってしまって。だらしないですよね」

こう切りだした岡田さん(仮名)は某大手企業の元常務。63歳で定年となり8カ月後に再就職。これまでのキャリアを買われての就職だったそうだ。

半年で出社拒否になった元常務

定年になったらやることがなくなって、定年うつになるって脅されていたんですが、私の場合は幸い次が決まっていたので大丈夫でした。妻も8カ月ですからギリギリ我慢してくれたんでしょう。再就職先は関連会社です。数年前から積極的に同じ業界からシニア採用をしていましてね。昔の上司が呼んでくれたんです。
受け入れ態勢はきちんとしていました。研修期間もあるし、シニアも戦力として見てくれる。給料は下がりますが、本人の能力次第では70歳までいられるんです。私は気力と仕事の質には自信があったし、今までのキャリアを生かしてがんばろうと張り切っていました。
ところが……半年後に出社拒否です。完全にメンタルをやられてしまったんです。
原因はいろいろあります。期待に応えようとすればするほど空回りしたし、上司ともうまくいかなかった。パワハラみたいなこともあったりで。やっぱり人間関係は大きいですね。家では心配させないように振る舞わなきゃだし、疲れてしまったんです。
あと……せこい話なんですけど、前の会社のときはタクシーも自由に使えたし、周りも私のことをそれなりに扱ってくれました。ところが、再就職先では私はシニア社員の1人でしかない。飲み屋ひとつとっても扱いが変わります。そんなのはわかっていたことだし、大したことじゃないって思っていました。なのに、実際に経験すると結構、プライドが傷つくわけです。私みたいなのを〝塩が抜けない〟って言い方をするらしいです(苦笑)。
私は社外とも人間関係があるし、趣味だってある。タコつぼ人間になっているなんて自覚は皆無でした。でも、実際は長年過ごした組織で、しっかり塩漬けになっていたんです。私を引っ張ってくれた元上司が、いろいろと気にかけてくれるのも情けなくてね。結局、1年もたずに辞めてしまった。周りに迷惑をかけるからそれだけは避けたかったんですが……、情けないですよね。
某大手企業元常務 岡田さん(仮名) 64歳

張り切って再就職したのに〝塩〟が抜けずに退職とは、なんともやるせないお話だ。拙著『定年後からの孤独入門』でも詳しく解説しているが、塩漬けは「手あかがついている」と表現されることもある明文化されることのない、暗黙のルールだ。1日の3分の1以上を過ごすルーティンだらけの職場環境が個人に及ぼす影響は想像以上に大きい。

次ページ〝塩〟が抜けない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
  • コロナショックの大波紋
  • コロナショック、企業の針路
  • iPhoneの裏技
  • コロナ戦争を読み解く
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
大手不動産がこぞって参戦<br>「シェアオフィス」ブームの内実

テレワークや働き方改革の浸透で存在感を高めているのが「シェアオフィス」です。大手から中小まで多数の参入が相次いでいますが、目的はさまざま。通常のオフィス賃貸と比べた収益性も事業者で濃淡があり、工夫が必要です。