なぜ「定年後」の男性は悲惨なことになるのか イキイキしている人は2割未満?
定年後に直面する会社生活とのギャップ
――今年4月に刊行された『定年後』(中公新書)が10万部を突破しました。定年後の過ごし方に関心が集まっている理由を、どのように見ていますか。
私は企業から依頼を受けて、50歳前後の社員に対し、「どのようなセカンドキャリアを描くか」についての研修をよく行っています。そこで感じるのは、多くの人が定年後のことを考えていないという事実です。定年が60歳の誕生日なのか、60歳になった年度末なのか知らない人すらいました。
会社にいれば仕事があり、人との繋がりもあり、定期的に給料ももらえます。守られて日々を過ごしているので、先のことまで考えている人は少ないのです。けれど、意識すらしていないレベルかもしれませんが、「いつかは会社を離れないといけない」という漠然とした不安はあるもので、そこに本書のテーマが刺さったのかと思いますね。
――漠然とした不安とは、具体的にどういったものでしょう。
よく言われるのは、老後にいくら必要か、もらえる年金はいくらか、貯蓄はいくらか……などおカネに関する不安です。確かに最低限のおカネは絶対に必要ですし、数字として見えるのでわかりやすいのですが、実際に定年後の人たちに話を聞くと、おカネで悩んでいるのは少数派なんです。
――では、多いのはどのようなことなのですか。
会社生活とのギャップです。会社中心の生活を送っていた人が定年を迎えると、仕事や人間関係が一気になくなります。同僚と飲み会をしたり、趣味を一緒にしたりと、オフの楽しみも会社に組み込んでいた人は、それもなくなる。急に居場所がなくなって、困惑してしまうのです。そのギャップを埋めるには、会社中心の働き方を修正するか、定年後の生活を変えるかどちらかですが、すぐには難しいものです。
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