なぜ「定年後」の男性は悲惨なことになるのか イキイキしている人は2割未満?
――会社から離れたとしても、定年後にできた時間を趣味などに費やして、日々楽しく過ごせないものなのでしょうか。
そう考えていても、実際に定年を迎えると、思っていたほど楽しめない人が多いですね。ある人は定年後に地元に帰り、趣味であるゴルフ三昧の日々を送ろうと、ゴルフ場の会員権を買いました。すると、そのうちに「ゴルフが難行苦行のようだ」と言うようになったのです。
結局、その人にとってゴルフは、会社の仕事があるからこそ成り立つ趣味だったんです。仕事の合間にあくまで「気晴らし」として楽しんでいたので、それだけになるとしんどくなる。一方で、定年後に趣味の釣りにますますのめりこみ、毎日夢中になっている人もいます。自分の趣味が気晴らしのものか、本物なのか、定年になるまでわかりづらいですが、単なる気分転換の趣味だったと気づいてから初めて次のステップに進む方も少なからずいます。
――定年後に居場所や趣味を見つけられないと、どのような弊害が現れるのでしょう。
私の知人で、家族関係がギクシャクしてしまった例があります。その人は定年後、再就職しようとしてもなかなか決まりませんでした。そんな日が続いて焦り、奥さんが友人との電話を切った後に「長い」と言ってしまったりするようになる。出かけるときは「どこに行くんだ?」と聞き、夜遅く帰ってくると、「どこをほっつき歩いていたんだ!」と怒鳴る。それで大げんかになり、子供も巻き込んで家族会議を開いたと聞いています。
多くの家庭では、夫が毎日家にいることを、妻は嫌がるんですよね。出かけるときにいちいち伝えないといけませんし、お昼ご飯を用意するのかも確認しないといけなくなるからです。私の高校時代の友人女性なんか、定年後の旦那のことをボロカスに言っていますよ(笑)。
――悲惨です……。しかもご著書の中で、定年後にイキイキと過ごしている人は2割未満という、驚きの記述がありました。
その数字は、私の先輩である60代半ばの人の見解なので、統計結果ではないのですが、そんなに大きく外れてはいないと思いますね。
培った経験をカスタマイズする
――定年後をイキイキと過ごすために、趣味や居場所を見つけるコツはあるでしょうか。
個人事業主に会うことが1つのヒントになるはずです。個人事業主は、社会の要請や顧客のニーズと直に接していますよね。けれどサラリーマンの場合、組織を通じて間接的にそれらと接し、分業制で仕事をしているだけなのです。
たとえば、私は芸人さんの生きざまが好きで、取材などで話を聞くことがあるのですが、彼らは他人になにか言われても、決められた枠に収まりはしません。チャンスがあれば積極的に打って出て、ものにしようとしますよね。ギャンブラーの人もそうで、偶然を商売にしているので、「今日と明日が同じであるはずはない」という前提に立っています。だから、ツイていないときは、しばらく会っていない人に手紙を書いたり、いつもと違う道を通ったりして、ツキを呼び寄せようとします。これはサラリーマンにはない考えですよね。サラリーマンは自分を主張せず、人の言うことをちゃんと聞いて、毎日同じことをしていたほうが出世できる場合もありますから。
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