家族を振り回す「家庭内管理職」の迷惑な実態 退職後も影響力を行使したい人の精神構造
定年後の悲劇! 妻を悩ます「主人在宅ストレス症候群」
筆者の外来には近年、「家庭内管理職」タイプの男性に悩まされる患者が多く訪ねてくる。患者からの訴えは切実だ。以下、事例を紹介したい。
ある60代の女性は、夫が定年退職してずっと家にいるようになってから、体調を崩して通院している。夫は支店長まで上り詰めた仕事一筋の元銀行員。とくに趣味もなく、外出も嫌いなので、ずっと家にいる。暇なせいか、妻の家事のやり方にいちいちケチをつける。そのうえ、食器の洗い方や洗濯物の干し方、掃除機のかけ方や買い物の仕方など、銀行員らしいきちょうめんさで何かと細かいルールを決めて、それに従わせようとするという。ただ夫が家事を手伝うことはない。最近では、近所の人のゴミ出しにまで細かくクレームをつけ、煙たがられているようだ。
夫が銀行に勤めていたころは、何人も部下がいて、自分の命令ひとつで人を思いどおりに動かしていたらしく、「同期でいちばん出世した」と口癖のように言う。定年退職後は自分が部下の代わりにされていると妻は感じており、正直なところ、うんざりしている。
この妻は、典型的な「主人在宅ストレス症候群」に罹患(りかん)していると筆者は考える。夫が定年退職して一日中家にいてストレスを与える存在になり、妻が心身に不調を来たす。筆者の外来に通院する患者にもこの症状に悩む人は多い。
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