家族を振り回す「家庭内管理職」の迷惑な実態 退職後も影響力を行使したい人の精神構造

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解決策としては、夫婦が一緒にいる時間をできるだけ減らすしかない。しかし、行くところがない夫は、ほとんど外出しない。かといって、妻が趣味やスポーツなどのために外出しようとすると、夫の機嫌が悪くなる。「おれの昼飯は、どうなっているんだ。おまえは外で豪勢なランチを食べて、おれは家でお茶漬けか」などと難癖をつける。

おまけに、「何時に帰るんだ」と詰問。その時間をちょっとでも過ぎると、妻の携帯に電話して「おれの夕飯はどうする気だ!」と怒鳴るので、妻はおちおち買い物もしていられない。これでは妻の調子が悪くなるのも当然だが、自分が妻の不調の原因になっているという自覚は、そうした夫たちにはないようだ。

「家庭」という場で支配欲求を満たそうとする夫たち

夫が妻に細かいルールを押しつけて、従わせようとするのは、現役時代のように部下を動かして支配欲求を満たすことができないからだろう。妻の家事のやり方にケチをつけることでしかその不満を発散できない。

他人にケチをつける人は、相手の価値を否定して、自分のほうが上だと優位性を誇示したい欲望をしばしば抱いている。こうした人はよくいるが、もし上司だったとしても大変だ。

たとえば、筆者がメンタルヘルスに関する相談を受けているある企業のケース。業績がよく、できる人材が集まる販売促進部に40代の男性部長が異動してきたのだが、前任者のやり方をすべて否定しなければ気が済まず、部下にもダメ出しばかり。多くの部下が困っているという。

メディアで新たな手法が脚光を浴びるたびに導入したがり、その研修に参加するように部下に命じる。部下からは「これまでのやり方でうまくいっていたし、業績もよかったのに」という不満が噴出するが、部長は耳を傾けようとしない。それどころか、「どうだ。新しいやり方のほうが、うまくいくだろう」と同意を求めるので、部下は答えに窮するという。

なぜこのようなことが起きるのか。筆者が見るところ、この部長は、できる人材が集まった部署で自分が認められるのか、部下のほうが優秀だったら自分の立場がなくなるのではないか、という不安にさいなまれているように見える。自信がなく、不安が強いからこそ、前任者のやり方を否定せずにはいられない 。

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