『孤独のすすめ』「ソロ活」『孤独のグルメ』……。今、ちまたでは、「孤独」をポジティブにとらえる風潮が高まっているように見える。非婚化が進み、生涯未婚率は2020年には男性が26.0%、女性は17.4%、2030年には男性が29.5%、女性は22.5%まで上昇するとみられ、男性の約3人に1人、女性の4人に1人は生涯独身という時代を迎えようとしている。
孤独死などが社会問題になる中で、「孤独を過度に恐れるな、受け入れろ」といったメッセージに、安心感を覚える人も多いことだろう。確かに、人間にとって、「1人」でいる時間は重要だ。人との関係性に思い煩わせることなく、思索をめぐらせ、内省することで自分を高められる。一方で、過度な「ぼっち」信仰が、結果的に、日本人を「孤独」へと駆り立てているところがあるような気がしてならない。
最も恐れられている「孤独」という病
今、世界で最も恐れられている「伝染病」。それは「孤独」だ。「社会的孤立が私たちを死に追いやる」「慢性的な孤独は現代の伝染病」……。欧米のメディアにはこんな見出しが連日のように踊る。
2017年8月には、アメリカ・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授(心理学)が、アメリカ心理学会の年次大会で、孤独の健康影響効果について発表し、「世界中の多くの国々で、『孤独伝染病』が蔓延している」と警鐘を鳴らし、社会的反響を呼んだ。
同年10月には、オバマ大統領の下でアメリカ連邦政府の公衆衛生局長官を務めていたビベック・マーシー氏が『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌上で、「孤独は深刻化する伝染病であり、その対処は喫緊の課題」という論文を発表し、大きな注目を集めた。
マーシー氏は任期中、アメリカ国中を視察して回り、「孤独がありとあらゆる年代や社会環境の人たちを蝕(むしば)んでいる実態」を目の当たりにし、孤独こそが多くの健康・社会問題の根底にある、と喝破した。「病気になる人々を観察し続けてきてわかったのは、その共通した病理(病気の原因)は心臓病でも、糖尿病でもなかった。それは孤独だった」。アメリカの公衆衛生の最高指揮官のこの独白は衝撃をもって受け止められた。
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