1月17日、イギリス政府が「孤独担当相」を新たに任命するというニュースが世界を駆け巡った。今回はその背景や事情について掘り下げてみたい。
この話題は日本でも衝撃を持って受け止められたが、数カ月前、拙著『世界一孤独な日本のオジサン』取材のため、現地を訪れて同国の「孤独対策」をつぶさにウォッチしてきた筆者も、「ここまでやるか」と「驚き半分、納得半分」の思いだった。
本連載の前回記事、「日本の男性を蝕む『孤独という病』の深刻度」の中でも触れたように、「孤独」は今、世界各国で、今世紀最大の「伝染病」として危惧されている。中でも、国を挙げて「孤独」への取り組みを進めているのがイギリスだ。日本同様、少子高齢化の進むイギリスでは、特に高齢者を中心に孤独に苦しめられる人が激増している。
調査によれば、約900万人がつねに、もしくは、たびたび孤独を感じており、20万人の高齢者が1カ月以上も友人や親せきなどと会話をしていないという。プレスリリースでは、テリーザ・メイ首相の言葉として、「あまりに多くの人々にとって、孤独は現代の悲しい現実だ。高齢者、介護者、そして、愛する人を亡くした人たち――話す人がいない、考えや日々の出来事を共有する相手がいない人たち――が耐え忍ぶ孤独に向き合い、解決するためのアクションを取っていきたい」とつづられている。
記者会見で「介護者の孤独」について吐露
ここで、目に留まるのは「介護者」(Carer)という言葉だ。高齢者や遺族の「孤独」は想像がつきやすいが、ここであえて、「介護者」について触れたことに少し、唐突感があったが、思い出されるのが、19日に引退を発表した小室哲哉さんのことだ。
記者会見の中で小室さんは「会話のやりとりというのが日に日にできなくなってきた」「わかってもらいたいけどわかってもらえない、聞いてくれるんだけど、理解をしてもらっているのかな」と、闘病中の妻となかなかコミュニケーションをとれない切なさや辛さ、まさに、「介護者の孤独」について吐露していた。
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