「ダメ部」と言われた青山学院大学の陸上部を今年1月の箱根駅伝での優勝に導いた原晋監督は、「今の選手は理論で言わないと納得しない。ただ、理論だけでは男は動かない。おまえのために、というのが必要」と、いつも目標を達成するための夢を熱く語ったという。その言葉のひとつが、「男たる者、何か一つやり遂げよう」というもの。こうして、部員達のモチベーションを高めていった(コメントは日刊スポーツより引用)。
これこそが、まさにコミュニケーション力のなせる技。「コミュ力」を高めれば、人の心を揺さ振り、とんでもない成果を引き出すことができるのだ。後段で触れるが、原監督のコミュニケーションは、「ロゴス(理)」と「パトス(情)」による説得の成功事例といえる。
アメリカでは、これを「ノウハウ」「テクニック」として学ぶ。「宇宙探査は価値あるものか」「学校に制服はあった方がいいか」「子供は携帯を持つべきか」「死刑制度は廃止すべきか」――。世の中には「正解」がない「問い」があふれている。さまざまな立場、考え、信条が入り混じるアメリカには、「ディベート」によって、こうした考え方の違いを明らかにし、その功罪や可否を論じることで、「最適解」を見出そうとする社会的なルールがある。だからこそ、ディベート力は、社会的な成功に直結する。それほど、重要なスキルなのである。
幼稚園から学ぶディベート
ディベートとは、「知的格闘技」である。多くは高校や大学といった高等教育で、そのスキルを学ぶが、最近はもっと幼い子供のうちから、その力を養成しようという学校も現れ始めた。
マンハッタン中心部にあるスパイヤーレガシースクールもその一つ。幼稚園からミドルスクール(中学校)まで、5~13歳のすべての学年に、ディベートの授業が取り入れられている。同スクールは、自ら弁護士や大学教授として活躍する教育熱心な母親たちが、特に優秀な(gifted)子供たちのニーズに合った学校を作りたい、と立ち上げたエリートプライベートスクールだ。
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