小室さんを蝕んだ「介護者の孤独」の深刻度

イギリスに孤独担当大臣が誕生するワケ

電話はひっきりなしでやむことはないが、最も電話が多くかかってくるのが誰もが寝静まった夜の時間帯だ。闇夜が孤独感を掻き立てるのだろう。電話をかけて来るのは3分の2が女性。「夫を亡くして1人だ……」など身の上や「孤独感」についてせきを切ったように、切々と訴えるが、男性はまったく違う。

「洗濯機がどうも調子が悪い」「鶏肉はどう調理するのか」「サッカーの話をしたいのだが」など、ほとんどは何らかの「理由付け」から始まる。「自分は孤独だ」とは決して言うことはない。長らく話している内に、「実は妻を2年前に亡くして……」とボソッとつぶやく。

「男性は自分たちの『感情』と向き合うことが少なく、『孤独』はスティグマ(不名誉)だと思って押し殺しているところがある」。シルバーラインの担当者の目にはそんな「不器用な男性の姿」が映る。そうした我慢は男性たちの体を知らず知らずに蝕んでいく。

男性は、妻を失うと社会から隔絶されてしまう

男性が特に孤独の犠牲者になりやすい、という視点での取り組みも活発に行われているが、ある高齢者支援団体が取りまとめたレポート「孤立~高齢男性を襲う危機〜」では、男性の孤独の実態や、なぜ男性が孤独になりやすいのかが、詳しく分析されている。それによれば、女性は夫以外の隣人やコミュニティ、親戚など幅広く人間関係を構築しているが、男性は配偶者への依存が高く、妻を失うと、社会から隔絶されてしまうリスクが高いという。

「男らしくあれ」というマッチョ信仰が、男性を縛りつけており、なかなか悩みを打ち明けられない、助けを求められない傾向もある。また、「プライドの生き物」である男性は「ボランティア」「慈善」「高齢者支援」といったサービスの受益者になることに抵抗を覚えやすい。「孤独を解消するために」などといった言葉を聞くととたんに、「自分は関係ない、と耳を塞いでしまう」とレポートは分析している。

もちろん、孤独は高齢男性に限定されるものではない。イギリスでは、若者から女性まで幅広くまん延する「国民病」として認識されており、日本とは比べ物にならないレベルの施策と研究が進んでいる。どの地域に孤独な人が多いかの分布を地図上で示すマッピングプロジェクト、地域を挙げたランチパーティー、高齢者宅への定期的な訪問サービス、アクティビティやティーパーティーへの送り迎えのサービス、高齢者へのIT指導、文通のサービスまで、ボランティアの力を最大限に活用した手厚い支援が展開されている。

日本で、「孤独」について言及すると、心配している人が非常に多い一方で、「孤独で何が悪い」「ほっておいてくれ」「余計なお世話」と漏らす人も少なくない。まだまだ、「孤独」がタブー視されている側面もあるのだろう。イギリスで、「孤独」問題が多くの人の口の端に上るようになったのは、それぞれが、「自分ごと」としてとらえているからだ。その萌芽はすべての人の人生に潜んでいる。

「孤独」は自分の問題であり、社会の問題でもある。日本においても、国、自治体、コミュニティ、個人が一体となった議論や取り組みが急がれている。前回記事でも記したが、拙著『世界一孤独な日本のオジサン』では、イギリスの先進的な取り組みも詳細に説明している。お手に取っていただけたら幸いだ。

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