つまり、誰かといつも一緒にいなければいけない、結婚していなければいけない、ということではなく、パートナーや友人やコミュニティの誰かとつながり、本当に信頼し、支え合う関係性を築き、維持していくことができるかどうかによって、人生の質は大きく影響されるということだ。
しかし、ウォールディンガー氏いわく、「人間関係は複雑で込み入っており、家族や友達との関係をうまく維持していくのは至難の業。その努力は地味で、死ぬまで続く必要がある」と言うように、「孤独にならない生き方」は決して、楽に手に入るものではない。「定年退職後、いちばん幸福な人は仕事仲間に代わる新しい仲間を自ら進んで作った人たち」とあるように、「孤独上等」と、引きこもることによって、幸福は得られるものではない、という主張だ。
実際に、「孤独」信仰を極め、長期間孤独を続けると、他者とかかわりを持つことがどんどんと苦痛となり、さらに孤立していってしまう。いったんはまるとなかなか抜け出せない「蟻地獄」のようなものだ。極端な「孤独」礼賛文化の下で、日本は世界に冠たる「孤独大国」になりつつある。
人生100年時代の重要問題
「孤独」はこれからの日本の大問題だ。昨今は、人生の後半戦は早々と、人間関係を整理し、孤独と向き合いながら、店じまいの準備を勧める声もある。しかし、人生50年、60年時代ならまだしも、人生100年時代に、退職後の30年も40年も、人と付き合わず、本ばかり読んで、引きこもったり、「終活」を続けたりするわけにもいかないだろう。
定年後の長い時間に必要なのは「終わるための活動」ではなく「元気にはつらつと生きていくための活動」であるはずだ。そのためには、「一人」を楽しみながらも、「孤独」を過剰にロマン視したり、畏怖するのではなく、適度に怖れる必要があるのではないか。また、40代、50代の内から、将来的な「孤独」について考え、その対策をしておくことも大切だろう。
特に、中高年の男性はさまざまな要因から「孤独」の犠牲者になりがちだ。というわけで、その負の影響や、なぜオジサンは孤独になりやすいのかを分析した『世界一孤独な日本のオジサン』(角川新書、2月10日発売)を執筆した。具体的な処方箋や明日から実践できるコミュ力改善法なども盛り込んだ「孤独にならない生き方」を探る対策本になっているので、関心をお持ちの方は手に取ってほしい。
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