64歳元常務が「再就職先」で味わった哀れな末路 偉くなればなるほどアウェー耐性は脆弱化
「話し掛ける前に『話し掛けてよろしいでしょうか?』と聞かなくてはいけない」
「上司と廊下で擦れ違うときは直立不動であいさつしなければならない」
「食事は上司より遅めに取り、上司より先に戻ってなければならない」
といった軍隊式ルールや、
「年下には命令口調で話して当たり前」
「部下は上司に報告するのが当たり前」
「雑用は若手がやって当たり前」
といった年功絶対ルールは比較的わかりやすい塩だし、
「暴力的なノルマ」や「異常な長時間労働」などは、ブラックペッパーならぬブラックソルト塩だ。
こういった会社の職場風土の違いに、前職の塩が邪魔をして適応を妨げる場合もある。
いずれにせよ会社の数だけ塩の種類があり、きゅうりの塩漬けなら沸騰したお湯でゆでれば簡単に塩抜きできるが、長年1つの会社で塩漬けされた思考回路はそう簡単に抜けるものではない。忠実に仕事をやってきた人ほど骨の髄まで染み込んだ塩を抜くのにてこずり、解けないパズルに苦悩し、自信喪失する。
組織の最上階にはびこる「塩の化石」
とりわけ運命共同体的な面が強い日本の職場では、会社組織特有の思考パターン=塩を理解し、実践する人ほど重宝され、役職やら権力やらを手に入れることができる。企業の不祥事が発覚したときに明かされる組織の最上階にはびこる教条主義や前例至上主義は、塩が年月をかけて結晶した、いわば「塩の化石」だ。
しかも、職場で偉くなればなるほど「塩の恩恵」を受けるようになる。「役員以上はカード支給」「役員以上は役員専用エレベーターを利用」「役員以上の家族のみ使える会員制宿泊施設」などの特別塩だ。そのうえ、周りがヨイショ、ドッコイショの先回りコミュニケーションをしてくれるので、アウェー耐性は脆弱化する。
新たな職場=完全なアウェーで、わからないことを聞くこともできず知ったかぶりしてしまったり、年下上司に自分からあいさつをすることにも抵抗を感じてしまったり。自分が長年築いてきた経験と自負心と「キャリアを買われての再雇用」という事実が「なめられたくない」という厄介な感情に置き換わり、自分を自分で追い詰めてしまうのだ。
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