
つながりが動機となり、傑出した才能が生まれる(写真:cba/PIXTA)
「自分には語学の才能がないから」「ウチの子は数学向きの頭をしていない」「スポーツにはそもそも向いていない」……などと言って、自分や他人の可能性を諦めてしまった経験はないでしょうか。
イギリスの人気ジャーナリストにして、世界的ベストセラー『失敗の科学』『多様性の科学』の著者マシュー・サイドは、それら「人の能力は生まれつき決まっている」論を真っ向から否定。彼の原点となる著作『才能の科学』において、スポーツ・ビジネス・学問・芸術などあらゆる分野を横断しながら、「人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法」を科学的に示しています。
「才能がない」と諦める前に知っておきたい、「成長する人と組織の共通法則」とは? 同書より一部抜粋、再構成して5回連載でお届けします。
“誕生日が同じ”学生のレポートを読む効果
2003年に2人のアメリカ人心理学者、グレッグ・ウォルトンとジェフリー・コーエンが興味深い実験を考案した。イェール大学学部生の一団に、解くことができない数学の問題を与えたのだ。だが、しかけが1つ施してあった。前もって学生たちには、かつてイェール大学で数学を学んだネイサン・ジャクソンという人物が書いたレポートを読むように言っておいたのだ。表向きは数学科について若干の予備知識を与えるという口実だったが、じつはこれが研究者2人の策略だった。
じつはジャクソンというのは架空の学生で、実際にレポートを書いたのはウォルトンとコーエンだった。「ジャクソン」はレポートの中で、どんな仕事に就くべきかわからずに大学に来て、数学に興味を持ち、現在ではある大学で数学を教えているという経緯を語っていた。レポートのなかほどには、ジャクソンの個人情報を一部記したコマがあった。年齢、出身地、学歴、誕生日。
さて、うまいのはここからだ。半分の学生については、ジャクソンの誕生日はその学生自身と同じに変えてあった。残りの半分の学生には変えていないものがわたされていた。「数学に長けた人間と誕生日が同じ、というなんの関係もないことが、動機を刺激するかどうか調べてみたかったのです」と、ウォルトン。学生たちはそのレポートを読んだうえで難問を解くよう求められたのだ。
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