ウォルトンとコーエンが驚いたことに、ジャクソンと同じ誕生日の学生たちの動機水準は少々上がったり、はね上がったりしたどころではない。激増したのだ。誕生日が同じ学生たちは、そうでない学生たちに比べて65パーセントも長く、解けない難問に取り組み続けた。また、数学に対してもかなり積極的な態度を見せ、自身の能力をより楽観的にとらえていた。はっきりさせておくと、学生たちはジャクソンのレポートを読むまで、数学に取り組む姿勢はみな同じだった。
「学生たちは1人ひとり部屋に閉じこめられてテストを受けました」と、ウォルトンはジャーナリスト、ダニエル・コイルの取材に語っている。「ドアは閉められ、学生たちは社会的に隔離されていました。それでも(誕生日のつながりは)意味を持ったのです。彼らは一人きりじゃなかった。数学への愛と関心が彼らの一部になったのです。理由は本人たちにもわかりませんでした。ふいに、やっているのは自分一人じゃなくて、自分たちになったのです。
こういったできごとが強い効果を持つのは、これらがささやかで間接的だからではないかと我々は考えています。同じ情報を彼らに話していれば、彼らが気づいていれば、効果は小さかったでしょう。戦略的にやることじゃない。考えてみもしないから、有効だと思わない。無意識なのです」。
ここで機能しているものは「関連づけによる動機」と呼べるかもしれない。潜在意識に深く焼きついて、動機反応の火つけ役になる、ほとんど気づかれないささやかなつながりだ。イェール大学の学生たちの場合、そのつながりは誕生日で、こんなぐあいに強い揺さぶりをかけたのだ。
「この男とは似たところがある。彼は数学で本当にすばらしい成果をおさめた。自分もそうありたい!」。
コーエンはこう語っている。「属したい、つながりを持ちたいというのは人間にとってもっとも重要な意欲の一つです。こういったつながりを維持したいという基本的動機が人間にあらかじめそなわっているのは、ほぼまちがいないことです」。
ある選手の成功が後の新たな才能を生む
ここで、コイルの『才能コード』から引用した表を見てほしい。
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