では、また別の話を考えてみよう。日付だ。パターンを見てほしい。なにか気づくだろうか? コイルは次のように述べている。
傑出した才能が生まれるまでの時間
どの例でも、最初のうちは比較的緩やかに花開き、(トップ100の)選手が10人以上に達するには5年か6年を要する。最初は刺激が弱くて、そのあとしだいに強くなったせいではない。これにはもっと根本的な理由がある。深みのある練習には時間がかかる(最高のバイオリニストたちは、20歳になる前に平均1万時間の練習を積んでいた)。才能は、タンポポが郊外の地面を広がるのと同じパターンで、この集団の中に広がる。1つの綿毛がやがていくつもの花を咲かせるように。
視野を広げれば、このパターン(力強い意欲の火花に続いて、10年かそこらで花開く)が何度となく姿をあらわす。1962年にスウェーデンのハンス・アルセアが卓球のヨーロッパ選手権で優勝した。当時、この予想外の勝利は国中を魅了した。その9年後、幼い頃アルセアの成功に目を見張ったステラン・ベンクソンが世界選手権で優勝し、20年間にわたりスウェーデンの非常に高水準な成功を牽引した。
このパターンは筆者のふるさと、レディングが1980年代に卓球で驚くべき成功をとげたことにも見られる。1970年に地元の少年サイモン・ヒープスが、国際ジュニア卓球選手権よりもはるかに大規模でもっとも有名な競技会、ヨーロッパユース選手権で優勝したのだ。
この勝利が注目されたのは、レディングにはとくに卓球の歴史も伝統もなかったからだ。だがヒープスの成功が意欲面でもたらした影響は劇的で、その後もあとを引いた。10年後には、レディングのとある小さな通りに、イギリスのそのほかの地域をすべて合わせたより多くの一流プレーヤーがそろっていた。
どの例にも2つの現象が起こっているのがわかる。一方には動機の力が見て取れる。火花がいかに強力な結果を引き起こせるか。この火花が必ずつながりに含まれなければならないわけではない——動機のトリガーはほぼ無限とも言えるほどたくさんあって、ふいに強い関心をもたせてくれるのだ。
だがその一方で、傑出性の獲得は長期にわたるプロセスだということもわかっている。触発されたからといって、近道がもたらされるわけではない。むしろその逆で、この火花は傑出の域にいたる、長く険しい道にその人物を歩み出させるのだ。
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