「一風変わった嫁」が手にした義父母同居の"幸せ" 事前に想像できない化学反応がそこにはあった

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「うちの両親も彼の病名で結婚に反対することはありませんでした。特に福祉に関心がある母は理解があります」

一緒に住んでみたら、和弘さんの穏やかさが心地よいことに気づいた。常識的で、声を荒らげることがなく、映画や食べ物を一緒に楽しんでくれる。真面目だけど不器用な亮子さんに対して「頑張れ」と叱咤激励することもない。

結婚してほどなく亮子さんは妊娠し出産。亮子さんはIT関連のパートタイマーとしてテレワークをしながら主婦をしており、和弘さんは息子をお風呂に入れたり保育園への送り迎えしたりなどを担っている。静かな日々だが、和弘さんはときどき爆音で音楽を聴くことがある。

「最初は驚きましたが、自分なりに勉強したら音楽で幻聴を抑えてリラックスしていることがわかりました。私たち夫婦の低い収入では防音設備付きのマンションなどには引っ越せないので、彼の実家にいさせてもらってありがたいです」

3世代同居、義理の両親とは補完関係に

和弘さんの両親はそれぞれの自営業でパワフルに働いている。自分の仕事が大好きで、外で好きなことをやりたい人たちだ。家事をやってくれる亮子さんとは補完関係になった。

「お金も口も出してくれます(笑)。でも、あっさりしているので大丈夫。10年後は介護しなければならないと思いますが、今は私たち親子3人を義理の両親に養ってもらっています」

義父母と別なのは寝室だけで、台所も風呂も共有。3世代が同居する中で血のつながりがないのは亮子さんだけだ。しかし、持ち前の適応能力を発揮して見ず知らずの地域に馴染みつつある。

「隣の家の奥さんと仲良くなってお互いの家を行き来しています。一緒にYouTubeを見ながら筋トレしたりするのが楽しいです」

出会ってから今までの間で和弘さんとケンカをしたことは一度もないという亮子さん。精神的にも経済的も和弘さんとその両親に助けてもらっていると感じている。狙って得られた幸せではないところが結婚の妙だと筆者は思う。

和弘さんと両親も亮子さんと同じようなことを感じているのではないだろうか。ちょっと変わったお嫁さんだけどうちに来てくれて本当に良かった、と。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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