犬が縁で結婚した夫婦がいる。関東地方の大企業で正社員をしながらアパート経営もしている植松育美さん(仮名、46歳)と6歳下の智也さん(仮名)だ。
Zoomでのインタビューを申し込むと画面の向こう側の2人の間にはクリクリした目の活発な幼児がいる。育美さんが44歳のときに想定外の妊娠をして出産した娘だという。
親を悲しませないように頑張っていた
「夫との2人暮らしの予定だったので今でも1LDKの部屋に住んでいます。自分たちで借金して建てたアパートの一室です。他6世帯は単身者向けです」
2人の愛犬2匹は同じ犬種で、基本的には飼い主にしか懐かない。子どもが触ると怒って危険なので、現在は智也さんの実家に預けているという。智也さんは家業の会社に入っているため、出勤すると犬に会える。育美さんも週末は犬たちを可愛がりに行く。
智也さんの両親は通算7匹もの犬を飼ってきた愛犬家だ。育美さんの犬も智也さんの実家で過ごすことには慣れている。
「私の犬は夫の犬と仲がいいわけではありません。トレーニングで絡まないようにしています。つかず離れずの距離感を保っているようです。もともとは猟犬として使われていた犬種で、飼い主には忠実だけどフレンドリーな性格ではありません」
朗らかな口調だけれど客観的かつ正確に説明してくれる育美さん。真面目な性格のようだ。特に父親が厳格で、高校時代まではテレビドラマも見せてもらえず、テストでは満点を取らないと叱られるほどだったと明かす。
「親を悲しませないように頑張っていましたが、楽しいことなんてひとつもありませんでした。夫によれば、『人生は修行だ』が私の口癖だったそうです」
そんな育美さんは大学卒業後、会社勤務という修行に没頭する。結婚願望は薄かったようだ。
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