「35歳のときに結婚して、45歳で子どもができた。世間からすると遅いかもしれないけれど、オレにはちょうどいいタイミングだったよ。若いときは自分のことで精いっぱいだったし、気楽な一人暮らしが好きだった。生活に他人を受け入れる準備はできていなかった。いろいろ経験して歳も取って、『他人と暮らすのも面白そうだな』と思えたときに結婚した。オレにとっては早くも遅くもなかったな」
尊敬している先輩ライターがコーヒーをすすりながら話してくれたとき、僕は一度目の結婚をしようとしていた。32歳ぐらいだったと思う。振り返れば精神的に未熟すぎたのかもしれない。
「泣き面に蜂」…1度目の結婚の終焉
僕は30歳を過ぎたあたりで仕事の方向性に悩み始め、長いスランプのただ中にいた。仕事量も貯金額も減り、「暇もやる気もあるけれど、何をすればいいのかわからない。しばらく遊んで暮らすカネもない」状態だった。結婚すれば活路が開けるだろうという甘い気持ちもあったのだと思う。
運や他人に依存するような決断が「活路」になるはずがない。共同生活はすぐにほころび始め、1年後には離婚することになった。寒い冬の日だった。人生初のぎっくり腰にもなった。「泣き面に蜂」ということわざの意味を肌で知った気がする。
離婚は苦しくて悲しい。祝ってくれた人たちを裏切ることにもなる。もう二度と経験したくない。その後、再婚した妻には「お前が死ぬまで別れない」という意味不明の宣言をして首をかしげられている。
だけど、この大失敗から僕は個人的に2つの教訓を得た。ひとつは、心身が不調のときにリスクのある言動をするとロクなことがない、だ。悩むなら公園でひっそり悩め。図書館で静かに本を読め。大きな判断をするな。おカネも時間もかかり、悩んでいる現実から目をそらし、生活を変えてしまいかねないこと(結婚、転職、宗教、世界一周、各種セミナー、MBA……)には手を出すな。やがて元気になるときまでのんびり待て。
もうひとつの教訓は、「家族より仕事を優先すべき」だということ。僕は仕事が不調だと元気がなくなる。ついでに自信も失って卑屈でひがみっぽくなる。もちろん、おカネもなくなる。こうなると家族すら壊れてしまうことを体感した。仕事より家族のほうが大事だからこそ、仕事を優先すべきなのだ。
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