大人の男性ならば当たり前の2つなのかもしれない。僕は手痛い失敗をしてようやく身に付いた。ふっ切れて仕事に没頭すると、今まで思い悩んでいたのが不思議に思えるほど面白くて手応えがあった。おカネにも少し余裕ができて私生活も立ち直り、好きな人ができた。
再婚したのは2年前。35歳になっていた。冒頭の先輩ライターと同じ年齢に結婚したことになる。僕も32歳での結婚は早すぎたのだろう。妻は学生時代の同級生なので、「45歳で子どもを作る」のは無理だと思うけれど、共働きの生活は今のところ快適だ。共通の趣味は「飲み食い」。晩酌を目がけてそれぞれの仕事に精を出している。夜は早めに寝て、朝から仕事をする習慣もついた。心身が安定しているときに結婚したら、より楽しくて健やかな生活が送れるようになった。
さあ晩婚さん、いらっしゃい!
人間も動物なのだから、妊娠や出産に適齢期があるのは仕方ない。でも、結婚には適齢期はないと感じている。
自分ひとりでも淡々と生活ができるし、独身の気楽さも満喫しているけれど、どこか満たされない部分がある。日々の食事もたまの旅行も肉親とのかかわりも、分かち合えるパートナーがいたら人生はもっと豊かになる気がする。補完し合えるような相手が欲しい――。
このような渇望が自然と湧き上がって来た時期に結婚をすればいい。社会としては晩婚化に伴う少子化は問題かもしれないけれど、無理な早婚は当事者たちを不幸にするし、「婚期」を逃した人たちを結婚から遠ざけてしまう。
35歳以上での結婚は一般的には晩婚と見なされると思う。「割れ鍋にとじぶた」などと自嘲ぎみに語る夫婦もいる。でも、本人たちがより幸せになり、親しい人からも祝福される結婚であれば歓迎すべきだ、と晩婚者のひとりとしては信じたい。
頭に白髪が混じるようになってからの結婚は、確かにちょっと気恥ずかしい。それだけに味わい深く、エピソードにも事欠かない。独身時代はどのように過ごしてきたのか。なぜ今さら結婚しようと思ったのか。結婚相手はどんな人で、出会いは何だったのか。お互いの家族は反対したりしなかったか。結婚生活はどうですか。意外と自由だったりしますよね? あれこれ語り合ってみたいのだ。
本連載では、35歳以上で結婚した人たちを親しみを込めて「晩婚さん」と名付ける。新婚当初からすでに中高年だった僕たち。企業活動に例えるなら老舗企業同士の対等合併であり、車の運転で言えば若葉マークともみじマークを両方付けて走っているようなものだ。小さな衝突事故などしょっちゅうだけど、大人の知恵と達観で乗り切るしかない。経験を共有し、一緒に泣き笑いましょうよ。さあ、晩婚さん、いらっしゃい!
無料会員登録はこちら
ログインはこちら