育休・時短制度が充実した超大企業の正社員で、大学教員(パーマネント雇用)の夫との間には2人の子ども。しかも、女の子と男の子を1人ずつ。井上綾子さん(仮名、42歳)は、『負け犬の遠吠え』的に言えば、完璧な「勝ち犬」であり、男の僕ですら嫉妬心をかき立てられそうになる。
しかし、綾子さんが36歳で結婚した「晩婚さん」だと聞くと、反感ではなく親近感と勇気が湧いてくる。彼女の幸福は運と努力の賜物なのだ。長く社内恋愛をしていた恋人から34歳のときに別れを告げられ、10人近くとお見合いをした末に、綾子さんは意外な場所で夫となる信一さん(仮名、38歳)と出会った。まずは時間をさかのぼり、前の恋人との別れたところから始めよう。
「君は僕を好きじゃない」…34歳でまさかの破談
相手は新入社員研修のときから知っている同期。20代後半から付き合っていた。お互いの親にも会って結婚しようと思っていたが、あるときに「君は僕のことを大好きじゃないよね? だから結婚はできない」と言われてしまった。綾子さんは「今、思うと図星です」と振り返る。
「私自身は『早く結婚しなくちゃ』と思い込んでいて気づかなかったのですが、彼を尊敬はしていかなかったし、どこかで気持ちが冷めていたのだと思います。
彼は家族思いで優しいところがあるので好きだったけれど、仕事ができるようには見えなかったし、自己顕示欲は人一倍強いので、陰で上司の悪口を言っていました。『オレは本当はもっとすごいのに、アイツは何もわかっていない』と。同期として『小っちゃい人だなー』と思っていました。でも、私から別れを言い出すことはできません。結婚はやめよう、と言ってくれたことが彼の最後のナイスプレーです。感謝しています」
この彼と結婚していたら「器の小さい男なので尊敬できない」とは指摘しないだろうし、現在も独身だったら彼に感謝はできなかったかもしれない。ただし、綾子さんはフラれた悲しみと怒りで心身が停滞してしまうタイプではない。むしろ出会いを求めて積極的に行動を始めた。
「彼と別れて土日が暇になったので、結婚相談所に登録しました。恥ずかしい気持ちはありませんよ。30代半ばで結婚していないのはすごく遅いな、と自分では思っていたし、地方に住む母からは『結婚はしないのか』と何度も言われていました。仕事が忙しすぎるわけでもないし、結婚はしたい。でも、相手がいないんです。結婚相談所で『会いたい』という希望を出しても、相手から断られたこともあります。20代ではない私に市場ニーズはないんだな、と感じました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら