実録!35歳以上さんの「理想の伴侶探し」 MAX上がり切った結婚の条件を下げるか、貫くか

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もちろん、信一さんのことも大いに尊敬している。仕事内容はまったくの畑違いなのでよくわからないが、「人の目を気にせず、愚痴も言わない。プライドはあるけれど自己顕示欲はない」男性なのだという。

「気の利いたことは言えない人だけれど、どっしりと構えた存在自体で救われています。私は仕事も家事もわりとテキパキできるほうですが、子育てにはどうにもならないほど心乱れてばかりです。『私には向いていない。もう子育てを降りたい』なんて言ってしまうこともあります。主人は中途半端な慰めは言わず、『そうだよなあ』と辛抱強く聞いてくれたうえで、『ほかに母親はいないんだから頑張ってよ』と一言。私も言うだけ言えば翌朝までは持ち越さないので、本当に助かっています」

家事に関しては不満がある。綾子さんがあくまで主体で、信一さんは「お願いしたら嫌な顔をせずにやってくれるけれど、自ら率先しては動かない。料理はまったくできない」。綾子さん自身も料理は得意ではなく、かといって総菜ばかりでは子どものためによくない。それでも綾子さんは信一さんに対する過度な要求は控えている。

「付き合っていたときに、『なんでこうしてくれないのか』とあれこれ求めたことがありました。彼から『僕には応えられないかもしれないから、しばらく距離を置こうか』と言われて気づきました。彼のできる範囲で頑張っているのだから、それ以上のことを言い過ぎてはいけないのだ、と」

家事が主体的にできない夫を甘やかしている、という見方もできるが、家事が得意な男性を選ばなかったのは綾子さんであり、その現実は受け入れなければならない。その代わり、「聞き上手で愚痴を言わず、まじめに働いて転勤もない夫」という、働く女性にとっては最高に近い条件を綾子さんは手にしている。

4歳年上の綾子さんと結婚した信一さんも、「姉さん女房」から多くのものを得ているようだ。

「彼にはいろいろ教えてあげようかな、という優しい気持ちにもなれますね。年齢差もありますが、博士課程まで大学院にいた彼と私では、社会人歴は10年以上違います。私から見ると彼はピュアすぎるところがあり、世の中は不平等だとわかっていない。

付き合っていた頃、任期付きの助教だった彼は、パーマネントの職を得るために公募をしている大学に履歴書を送っているだけでした。でも、表に出ているものって出来レースであることも多いですよね。今までお世話になってきた教授などをたどったほうが、いいポストを得られることもあると思います。結局、勤務している私立大学の中から声がかかったので、私のアドバイスが役に立ったのかはわかりませんけれど……」

聞けば聞くほどに、綾子さんと信一さんはお似合いの夫婦だという感想を抱く。キーワードは、綾子さんが何度も口にした「尊敬」という言葉だろう。成人とはいえ欠落したところもある男女が出会って補い合うのが結婚だとすれば、自分に欠けている性格や能力を持つ異性を認めて愛することは、温かい家庭を築く大前提なのだ。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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