「社会的な私とケア的な私に引き裂かれる」——。映像作家が"母"になって痛感した絶対的「不安」。少子化、生きづらさ、その背景にあるもの

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中村佑子さん
『マザリング 現代の母なる場所』の著者で、映像作家の中村佑子さん(撮影:梅谷秀司)

2020年末に刊行された『マザリング 現代の母なる場所』は、衝撃的な本だった。

子育てする日々をつづったエッセイや、仕事との両立といった子育て期の生活の回し方について取材した記事はごまんとあるが、授乳期の母親の状態は、ほとんど語られてこなかった。育児体験がある女性に聞いても、忙殺されるうちに忘れてしまったと話す人が多い。

産むも、産まぬも
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つかみがたいその渦中の感覚を言語化し、そこから見える社会の問題について書いた著者の中村佑子氏は、映像作家。

16年に初めての子となる娘を産み、「自分が今まで読んできたもの、携えてきた言葉では太刀打ちできない。とんでもない儀式を経たぐらいの体験」だったと振り返る。

育児をしていて社会に違和感を抱いたきっかけ

産婦人科で初めておなかの中にいる赤ん坊の心音を聞いたときは「自分の心臓の倍ぐらいの速さで鼓動を打つ他者が、お腹にいる。身体がどんどん変容することも、不安になった。この“存在論的不安”とも言うべき状態について誰かが書いていないか、と自己同一性や他者との関係を語る哲学の本で探したんですが、当初は見つかりませんでした」。

そこでまず、同じく母親になった女性たちに話を聞く。娘が成長し執筆が進むうちに、今度は母でない人にも取材したいと、子どもを産まないと決めた女性、父親になった男性、最後に自分の母親にも話を聞いて本にまとめあげた。

中村氏が社会に違和感を抱いたきっかけの1つが、外で行った授乳だ。出産後半年を過ぎたあるとき、電車の中で娘が泣き止まないので、人通りが少なそうな井の頭公園駅で降り、ホームで授乳ケープを使って授乳した。

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