「結婚に関しては、どんなに私が押してもウンともスンとも言わないので、『毎週末に会って別々の家に帰るのは不自然だから、せめて一緒に住もうよ』と提案しました」
結果的にはこの妥協案が功を奏した。信一さんは綾子さんと同棲することを母親(父親はすでに他界)に報告したところ、「結婚はしないの?」と詰問されたらしい。
「引っ越し先の部屋を内見していたときに、いきなり『結婚しようか』とプロポーズされてびっくりしました。結婚はしないと言っていたはずなのに……。うれしいというより驚いてしまいました。彼はお義母さんに背中を押されて初めて、『え、結婚? 僕のこと?』とハッとしたのではないでしょうか。あらかじめお義母さんと顔を合わせておいて、本当によかったと思います」
晩婚さんの男性は信一さんのように結婚願望が薄いタイプが多く、気ままな独身生活に終止符を打つことに不安と抵抗を覚えがちだ。敬意を抱いている既婚の第三者のアドバイスが必要なのだ。疎んじられることを覚悟で息子の尻をたたくことが、親世代の責任なのかもしれない。
あふれ出る、夫への「リスペクト」
結婚してからは、友人から「すごい巻きだね」と驚かれるほどスピーディな展開となった。すぐに第1子を妊娠。育児休業の間に信一さんが米国で研究活動をすることになり、あこがれの海外生活も経験できた。帰国して職場に戻ってすぐに第2子を妊娠し、今年の春にようやく職場復帰した。現在も時短制度を使って働いている。
「職場の人には迷惑をかけて申し訳ないと思っています。でも、うちの会社は最大3年まで育休が取れるし、既婚者は勤務地も配慮してもらえる。ありがたいです。主人は転勤のない仕事なので、大好きな東京で暮らし続けられています」
地方出身者の綾子さんが東京にこだわるのは、「優秀な人を尊敬したい、引っぱってもらいたい」という気持ちが強いからだ。
「うちの会社は歴史が長いので、地方の支社にはのんびりしているおじさんたちが多く、やる気があって仕事ができる人は東京の本社に集まっています。私自身はそれほどキャリアウーマンではないけれど、できる人の近くにいるのが好きなのです」
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