家事も育児も妻の方が得意。夫はやる気がないわけではないけれど、完璧にできる妻は口をはさみたくなることが多くてぎくしゃくする。妻がイライラする原因が、夫には理解できない。どっちも悪気はないのだけれど……。
比較的、夫婦仲が良さそうな共働き家庭でも、ちょっと突っ込んで尋ねてみると、こんな構図が見えることがある。今回登場する真理子さん(仮名・30代後半)の経験は、そういう夫婦の悩みに効きそうだ。
この連載で取材を重ねるうちに分かってきたのは、夫婦の愛情度合いや、相手のために何をどれだけするのが「当たり前」と思うかによって、問題解決の処方箋は異なるということだ。共働きか片働きかといった就労形態より、気持ちの方が大事で、今現在、相手をどう思っているかによって、ある夫婦には効くが、別の夫婦には効かない処方箋もある。今回は「配偶者のことを好きなんだけど、何かもやもや」な人向けのお話です。
あえて夫に「借り」作って、夫婦関係が改善?
真理子さんは都内在住の弁理士。大学院時代の先輩だった夫と小学生の娘の3人暮らしである。インタビューはある日のお昼休み、真理子さんの勤務先に近いオフィスビル内のレストランで行った。
実は同じ場所で数年前にもお話をうかがったことがある。その時のテーマもやはり夫婦関係だった。真理子さんの家族構成もお仕事も変わっていないけれど、今回の方がさっぱりと晴れやかな印象を受けた。
「今、PTAの役員もやっています。みんなテキパキして気持ちのいい人ばかりで楽しくって」。お久しぶりです、の次に出てきたフレーズと声の調子から、色んなことがうまくいっていることが、伝わってきた。
最大の理由は、数年前、真理子さんが弁理士試験に合格したこと 。より正確に言えば、試験準備のため、5年にわたり、夫が彼女を明示的にサポートしたことが、夫婦関係を大きく改善した。「私みたいに何でも自分でやりたくなる人は、あえて夫に借りを作ったのがよかった、と思います」と真理子さんは言う。
「あえて借りを作る」とは、一体どういう意味か。夫婦の歴史を振り返りつつ考えてみたい。
大学院の先輩だった夫と真理子さんが結婚したのは27歳の時。真理子さんはちょうど博士号取得後、就職をどうするか、という時期だった。「就職先によっては遠距離恋愛になるかもしれなかったので」結婚することに迷いはなかった。
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