働く母親から、こんな話を聞くことがあります。
「夫は忙しくて、子どもが寝てから帰宅する。保育園のお迎えどころか、送りにさえ行ったことがないし、連絡帳なんて書いたことがない。自分が残業しようと思ったら、ファミリーサポートセンターかベビーシッターを頼まなくてはいけない。もちろん手配するのは私。子どもが病気になったときに仕事を休むのも当然、私。イクメンなんて夢のまた夢。イクメン・ブームで育児をするパパが増えて、そんなの無理に決まっているわが家としては、やりきれない気分」
近年、育児をする夫、通称イクメンがブームになっています。保育園の送りではパパの姿をよく見かけるようになりました。そのおかげで「わが家の夫は、イクメンではない」と、むしろモヤモヤし始めた妻も多いかもしれません。
そういう状況が「変わるかもしれない」としたら、どうでしょうか。今回、ご紹介する事例は、都内在住の由紀子さんと斉藤さんご夫婦(仮名)。明るく朗らかな由紀子さんと落ち着いた優しそうな様子の斉藤さんは、元は2人とも会社員で、現在は共に自営業で教育関係の事業を手掛けています。小学生の長男と保育園児の次男がいます。
入院中のわが子を、週末30分しか見舞いにこない夫
由紀子さん(38歳)にとって、長男出産直後の数カ月は、文字どおり戦いでした。長男が先天性の病気を持って産まれ、1カ月検診の後、すぐに入院せざるをえなかったためです。退院したのはつかの間で、チアノーゼが表れて手術に向けて再入院することになりました。2カ月間に及ぶ入院中は由紀子さんが泊まり込んで付き添いましたが、夫は「週末の30分を除き、見舞いにも来なかった」(由紀子さん)そうです。
それはちょっとヒドイんじゃ……と思ったものの、ここは双方の言い分を聞いたほうがいいと思い、夫の斉藤さん(42歳)も一緒に夫婦でインタビューに応じていただきました。
斉藤:生まれてすぐ入院してしまったので、自分の子どもという実感がわかなかったのです。病院にいても僕にできることはなかったし、居場所がない、と感じた。だから、見舞いに行っても暇になると「帰って仕事をしようかな」と思ったのです。
由紀子:私はずっと付き添っているから、夫が少し代わってくれたら、やりたいことはいろいろあるのに、本当に30分で帰っちゃったのです。
斉藤:当時は家事もいっさい手伝わなかったですね。子どもとはコミュニケーションできなかったし……。
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