「何もしない夫」を変えたディズニーと"声" 子どもの見舞いにも来ない夫が変わった意外な理由

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そして実は、斉藤さんが大きく変わったきっかけは、ちょっと普通では予想がつかないものでした。それはなんと「声」だったのです。

斉藤:たまたま知り合ったある先生のところで、声の測定機を見せてもらいました。声音によって、赤や黄や青や緑色になるのです。説得しようとしているとき、怒っているとき、うれしいとき、悲しいとき、落ち着いているときなど、それぞれ色が変わります。自分の声が周りにどんな雰囲気を与えているかがわかります。その後、声についてアンテナを張るようになりました。

たとえば子どもは黄色い声(=楽しんでいるときの声)を出していることが多い。それに対して大人は冷たく、周りの雰囲気を悪くする声を無意識のうちに出していることがあります。声に注目すると自分の調子も整うようになり、他人のストレスや怒りに意識が向くようになりました。その過程で、楽しい声を出すようにして妻を怒らせなければ幸せに働ける、と気づいたんです。それからは家族中で「声」に気をつけるようにしました。するとそれだけで家庭の雰囲気がよくなったのです。

意外なところから「気づき」を得た斉藤さん。実は女性が働くのは当たり前という考えの持ち主でした。長男の手術が成功し元気になるとすぐ、由紀子さんに「これで働けるね。何をする?」と尋ねたほど。今は斉藤さんも由紀子さんも複数の企業やNPOで経営業務に携わりながら、自営業のような形態で働いています。夫婦で一緒に仕事をしたり、それぞれの人脈が相手の仕事に役立つこともあると言います。そう。夫婦の仕事の形態が変化したことも、斉藤さんの変化に大きく影響しています。

由紀子夫が何もしなかった当時、私はたまに文句を言いながらも、自分が家のことをすべてやるのも仕方ないと思っていました。私は今、平日のうち3日は夜、外で仕事に必要な会合に出ています。私の仕事が夫の仕事にも相乗効果があるから、夫が家事や育児をやるメリットを感じられるのかもしれません。

由紀子さんの分析はたいへん興味深いです。家庭においては、子どもとのかかわりが楽しくなったことが、仕事においては、妻のキャリアを応援することが、自分にとってもプラスになると気づいたことが、斉藤さんを変えていったということがわかります。

根っこにある「価値感」を共有できているか

夫婦の仕事が変わる中で由紀子さんの収入の家計貢献度は3割から4割ほどに増えています。ただ、収入そのものより「夫婦がお互いにやっていることを理解し尊重するほうが、仕事も私生活もスムーズにいく、と夫が気づいてくれたことが、変化の大きな理由だと思う」と由紀子さんは言います。

そして「ゴールの共有」は、斉藤さんと由紀子さんの結婚前の交際のあり方や、個人としての価値観からも読み解けます。2人はもともと実家が近所で、家族ぐるみでバーベキューをしたり、花火を見る間柄でした。

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