高学歴親が子どもを追い詰める 理論攻めで子どもの逃げ場なし
都内に住む40代の会社員ヤヨイさんが大学時代の友人と偶然会ったときのこと。連れていた長女を指して、友人は苦笑いを浮かべた。
「T大なの。完全に負け組でしょ? 嫌になっちゃう」
「うちも息子が来年大学受験だよ~」
とヤヨイさんはフォローしようとしたが、友人はさらに、
「最低でもMARCH(マーチ)くらいには行ってほしかったのにさ。じゃあね~」
と言って去っていった。
「わが子に面と向かって負け組って……。娘さん、傷ついたんじゃないかな。でも、私の本音を代弁してくれているように感じました」(ヤヨイさん)
せめて親程度の大学に
最低でもMARCH──彼女の本音もこれと同じだ。MARCHとは明治・青山学院・立教・中央・法政の東京私大5校の略称。「最低でも」と前置きしているように、関西にある2人の卒業大学は5校と同等だ。
「彼女も私もせめて親程度の大学にと思うだけなんだけど……」
一人息子を育てるワーキングマザーのヤヨイさんは、転職を繰り返しながら今の会社では管理職まで上り詰めた。入社試験の面接もするが、学生の大学名は数年前からマジックで黒塗りにされている。大学名で判断せず学生の人となりを見るよう人事担当者に言われるが、本音は「大学はどこ?」とつい聞きたくなる。
「学歴はどうしても気になる。自分自身は社会に出てから頑張って今の生活を手に入れた実感があるのに、わが子には『大学は関係ない』と言う勇気がない。ぼーっとしてて自己主張できなそうで心配。それなりの大学に入ってきちんと就職してほしい」
私大附属の中高一貫校に通わせているが「(附属大に)そのまま上がれると思うな」と宣言してある。もっと上を狙ってほしいのだが、このままではMARCHも微妙だ。友人の負け組話以来不安になり、高校2年から通わせている予備校のコマ数を増やすよう息子を説得中だがなかなか応じてくれない。「附属だから環境がぬるま湯なんだよ」と文句を言ったら、「自分がここにしろって言ったくせに」とにらまれた。