"35歳以上婚"は幸せか、試練の始まりか? 日本全国「晩婚さん」の真実を追う!

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バブルな元リク社長が選んだ、意外な結婚

最初の晩婚さんとは東洋経済新報社の玄関で待ち合わせをした。待ち合わせの3分ほど前に到着すると、担当編集者の傍らに初老の男性が立っていた。初回からミドル級の晩婚さんの登場だ。

木村幸一さん(仮名、48歳)は、白髪頭が後退していてあいさつも控えめなので、「初老」という第一印象を受ける。しかし、座って会話を始めるとイメージが一変した。とにかくエネルギッシュで、軽さを感じるほど冗舌なのだ。肌つやもよくて、眼光も鋭い。

慶応大学卒・リクルート出身の木村さん。現在は中小企業の社長をしている。モテないはずはない。木村さん、今まで遊んでいたのではないですか。もしくは忙しすぎて結婚する暇がなかった?

「その両方ですね。ハハハ。私は平成初頭、バブル入社です。当時は三高という言葉があったんですよ。高学歴・高収入・高身長の男性が人気でした。私は身長は170センチちょっとですけれど、今と違って髪の毛がありましたしねえ。ハハハ。いろんな女の子と付き合いました。

あの頃は短大卒の一般職で早く結婚したくて仕方ない女性が多かったので、すぐに親に会うように仕組まれたり。大変でしたよ。スキー場でナンパしたすごい美人と東京でも会ったら、『軽井沢プリンスを予約したからまたスキーに行こう』と誘われました。マジかよー、いきなり泊まりでいいのかよー、と思いながら車で迎えに行ったのです。そしたら、お母さんが娘のスキー板を持って見送りに出てきた。あれには参ったなー。仕事も猛烈にしていましたよ。リクルートには10年間いましたけど、『オレ、38歳ぐらいで死んでもいい』と思うぐらい働いていました」

笑えるが、共感は覚えにくいエピソードである。謙虚さや自制心を過剰に育んでしまった僕らロスジェネ世代とあまりに違うので、心からは理解できないのだ。ただ、ひたすら明るいので嫌味は感じない。

木村さんにも忘れられない恋がある。学生時代に1年間付き合った同い年の女性だ。

「彼女は高卒で働いていました。早く結婚をしたがっていましたが、私は学生ですからね。結婚なんて考えられません。別れた後も友だちとして遊んでいましたよ。1年後に彼女は別の男性と結婚するのですが、式当日の早朝まで一緒に遊んでいましたから。彼女が式に出るためにいなくなったとき、すごい喪失感が襲ってきたのです。あれ以来、ずっと引きずってきた面はありますね。たいていの恋人とは付き合って3カ月ぐらいで面倒くさくなって別れましたから」

そんな木村さんは現在、2児の父親である。結婚したのはなんと今年の春。昨年離婚したばかりの31歳の子連れ女性が相手だという。30年近く独身一人暮らしを謳歌していた木村さんに、どんな心境の変化があったのか。数カ月の新婚生活で早くも後悔していたりはしないのか……。次回に続く。

(イラスト:堀江篤史)

※次回は8月22日(金)に公開します。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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