「無収入の彼」と結婚したい女性が考えた"稼ぎ方" 「犬好き」同士知り合った2人のすごい展開

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「決め手は、彼女が僕の家族と仲良くしてくれていたことです。結婚前から僕抜きでうちの両親と泊りがけの旅行をしていましたから。地方開催のドッグショーを見るためです。結婚直前でガンが見つかって亡くなった母にとって、あれが最後の旅行になりました」

2人の結婚に大反対していた育美さんの父親に関しては、育美さんが「生まれて初めての反抗」をして押し切った。孫ができてからメロメロの「祖父バカ」になり、智也さんへの態度も一変。年上への気遣いが自然にできる智也さんと仲良く飲み交わしたりしているらしい。なお、智也さんの家業は実家を売却したお金で借金を返して立て直しに成功。現在は毎月の給料が出るようになった。

育美さんは今、人生で初めての幸せを感じていると語る。子どもがいることはもちろんだが、妊娠前からも夫と犬との生活を慈しんでいた。

「それまでは右も左も崖になっている細い道を一人で必死に歩いている気分でした。仕事を辞めたりしたら奈落の底に落ちて死んでしまう、と思っていたんです。でも、智也さんはそんな場所を笑いながら走り回っているような人(笑)。人生ってそんなに怖いものじゃないんだと気づかせてくれました。近所を散歩するだけでも楽しめることを教えてくれたのです」

結婚生活を重ねるほどに

結婚生活を重ねるほどに表情も考え方もほぐれていく育美さんを目の当たりにできることが智也さんはうれしい。ただし、生活に関しては年上かつ有能な育美さんがリーダーシップをとっている。

「『私のほうが一枚上手なのでケンカにはならないよ』と結婚当初に言われました。実際、そのとおりです。僕が何か言っても、理詰めで論破されて終わりです。車を買うときも、どうせローンを組むんだからいろいろオプションをつけちゃおうと思っていたのですが、妻からは『必要なもの、できれば欲しいもの、要らないものを事前にエクセルで表にして』と命じられました(笑)。友だちとの飲み会で話すと、『会社かよ!』と笑いのネタになります」

何でもおおらかに受け止めて笑いに変えられる智也さん。その力強い明るさを育美さんは呆れつつも尊敬しているのだと思う。

自分と似た部分ではなく、自分とは異なるところを相手の中に見出し、面白がりながら愛すること。それを結婚というのかもしれない。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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