本連載の著者である伊佐山元氏が共同CEOを務めるWiLはちょうど1年前の2013年末、ソニー、日産自動車など10社を超える大企業から3億ドルの出資を受け、投資ファンドを組成した。同ファンドは、出資元企業の技術を活用したベンチャーのインキュベーションを行うことを1つの目標に掲げてきた。
そして1年経った2014年12月、その第一号が姿を現した。ソニーとのジョイントベンチャー「Qrio」だ。既存の大企業と共創関係を作ろうとする、このプロジェクトは、「日本型イノベーション(革新)」ともいえるものだ。2015年は、こうした新種のスタートアップの活躍により、日本のベンチャー界隈は多様化し、活性化する年になりそうだ。まさにQrio発表当日に行われた、伊佐山氏と早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏の対談をお届けする。(編集部)
Qrioは何が新しいのか
伊佐山:今日(12月12日)、ちょうどソニーと新しいプロジェクトについて発表をしました。これはソニーが進めるオープンイノベーションの一環で、外部を活用して行う新事業の第一弾です。
入山:その話、詳しく聞きたいですね。どんなプロジェクトなんですか。
伊佐山:WiLが60%、ソニーが40%という出資比率で「Qrio」という会社を設立しました。家の鍵をスマホで管理し、鍵の受け渡し、入退室管理などに使用するというのが製品の第一弾。このプロダクトをソニーの人たちと一緒に開発・生産します。
Qrioにはいくつかテーマがあります。まず、ソニーが外部と本格的にこういう事業をやるのは初めてです。あとQrioはかつてソニーが人型ロボットを作っていたときのブランドです。その商標を今回のプロジェクトのためにいただいた。大企業が普通やらないようなことをソニーは思い切ってやってくれました。
入山:それはすごい。パソコンのVAIO(バイオ)の場合には、日本産業パートナーズに会社は売ったものの、商標はまだソニーが持っていますよね。
伊佐山:そうです。だけどQrioの商標は、ソニー側から「使えるのでは?」と提案してくれました。このスマートロックは、シェアハウスが増えていることもあり、必ず大きな需要があると思います。不動産の内見にいちいち人がついてかなくても済むし、家族の間での鍵の共有や管理もずっとやりやすくなります。
入山:これは面白い。
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