伊佐山:だけど、これは口で言うほど簡単ではなくて、人間って自分も含め情けないもので、苦戦している方を助けにいっちゃう。ロスに対して感じる思いのほうが痛いので、これを救いたくなります。でも、救う時間あったら伸びている会社の営業を手伝え、ということです。
そういうことを踏まえて、WiLは2015年にどのようなことをしていくべきか。ソニーだけではなく、多くの大企業とジョイントベンチャーを進めていく予定です。日産、NTT、全日空、JVC Kenwood、ベネッセコーポレーションなどの株主と、新規事業の共同運用はやっていきます。でも、将来的には出資会社を超えて、幅広く多くの企業の新規事業の仕掛け人になりたい。逆に言うと、実はWiLに出資していない会社からも、たくさんの問い合わせが来るんです。手伝ってほしいと。
入山:出資したいと?
伊佐山:そうです。だけど、必要以上にファンド規模大きくしちゃうと、キチンとした対応ができない。新規事業支援といっても、いくつかは成功させないと意味がないわけです。あまり手を広げすぎると、あいつ何だったんだで終わるじゃないですか、へたすると。だからここで数が少なくてもいいので、ちゃんと成功事例を生みだして、それを大きく伸ばしたい。そのうえで、次のファンドを組成するなどして、連続させていきたいわけです。
入山:WiLが狙っている領域が、ハードウェア関連の製造業が多い。ベンチャーキャピタルの成功事例としてはネット企業、ネットサービス企業ばかり目立っていますが、そうではないところにも新しさがあるように思う。ほかにも同じようなことをやっている会社はありますか。
伊佐山:他にはないはずですね。というか、そういう発想すらないんじゃないですか。実はベンチャーキャピタルはすごく狭い見方をするのです。要するに面白い会社見つけてそこに投資して儲けましょうっていうこと以上のことは実際にはできない。ベンチャーキャピタルが資金を集める際の契約にも縛られていますから、それは当然です。しかしWiLは金融ファンドとして運営しているだけではない。
バウンダリー・スパナーが時代を変える!
入山:話を伺って思ったのは、伊佐山さんは経営学でいうところの「バウンダリー・スパナー(境界連結者)」なんですね。閉じられた世界を別の世界と繋いでいく。それを社会レベルでやるのは、イノベーションを起こす上で大事なんです。
伊佐山さんは、それを「シリコンバレーと日本」ということで、まず国境というバウンダリーを飛び越えている。さらに、それだけではなくて「大企業と若いベンチャー」、さらに「年長者と若い人たち」というバウンダリーもうまくつなごうとしている。
これはものすごく大事なことだと思いますが、なかなかできることではない。WiLに人を採るときは、どういう基準で見ていますか。
伊佐山:これには本音と建て前がある。まず本音としては、まだそんなに人がいないので、現状のチームは知り合いだけです。信頼第一でやっています。WiLはまだ始まったばかりで、なんら成功の保証もないわけですし。(笑)建て前としては、ある意味ビジネスマンとしてのドライさを持ちつつ、人間としての配慮があるような人を採用したい。もちろん経歴も聞きますけど、それとりも学生時代にどういうことをしていたか、今世の中で起きている事件についてどういうふうに思っているか、という風に質問を投げかけると、だんだん人となりが分かる。
入山: 同じような経験を積んでいくことで、多くのバウンダリースパナーが生まれると思います。どれだけ多くの、そうした繋ぐ人材が生まれるか、これからが楽しみですね。
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