『寄生獣』山崎貴作品の本当の魅力とは?

「VFX"も"すごい、という作品を作りたい」

でも、日本で映画化すると決まった瞬間にリメイク権のオファーがあちこちから来ているみたいなんです。もしかしたら日本で作るならどういう風に作るのか。そのやり方を見たかったんじゃないかと。いつかハリウッド版の『寄生獣』が生まれるときもくるかもしれないですね。

予算の次元が違うハリウッドにはVFXではかなわない

――よくハリウッドの映像クオリティーがすごいのは、VFXにかける予算が違うからだと言われています。そもそも日本のVFXのレベルはどのあたりに位置しているのでしょうか。

いや、環境としてはダメだと思いますよ(笑)。もちろんわれわれは一生懸命努力していますが、結局、VFXというものは予算に裏打ちされたトライ・アンド・エラーで決まっていくんです。CGはトライ・アンド・エラーを何度も繰り返せばどんどん良くなっていくものなんです。

――そのトライ・アンド・エラーはどれくらい繰り返されるものなのでしょうか?

(撮影:大澤 誠)

この間、ハリウッドでVFXを作っている人に聞いてみたことがあったんですが、ハリウッドでは、トライ・アンド・エラーの設定上限回数は200回だというんです。僕らの場合は、全部のカットを10回もやり直したら、もう破産ですよ。人数もハリウッドの10分の1から20分の1くらいの人数で作っている。もちろん日本映画でも、何度もトライ・アンド・エラーを繰り返して作り上げるカットもあるし、1発、2発でオッケーにしてしまうカットもある。そこはケースバイケースですが。

ハリウッドでは、200回のトライ・アンド・エラーを重ねても大丈夫なように予算を組んでいるということです。ただ、そこで作られるクオリティの差ってほんのわずかなんですが、そのわずかの差が明らかに違う部分なんです。彼らは、どこから見ても本物にしか見えないようなゴージャスな絵作りを進めるために、僕らよりも190回も多く、トライ・アンド・エラーを繰り返している。そしてその200回のトライ・アンド・エラーを繰り返さないと生み出せないようなスーパーカットをいくつも用意しているわけなんです。それから経験値の違いがあります。

©2014 映画「寄生獣」製作委員会

――経験値とは?

たとえば僕らの場合だと、昭和の世界を作った後には宇宙戦艦の映画を作り。それから戦闘機の映画を作った後にはクリーチャーの映画を作ってという感じで。毎回、1から勉強し直さないといけない。VFXとかCGというジャンルでくくると同じように思われるかもしれないですが、毎回毎回、やる前は猛勉強なんですよ。それでなんとかここまでなら人様に見せていいだろうというレベルまで必死に持ち上げるのが、日本の現状です。だから裾野はとても狭いですし。まだまだ産業として機能していないので、そこはいつも必死ですね。前の経験を生かせる機会がないですから。

「面白い話だけどVFXもすごい」という作品を作りたい

でも海外の人はその経験を生かしまくっているんです。その違いはありますね。このプロダクションは動物の毛が得意だよねと言ったら、動物の毛ばっかり作っているし、あのプロダクションは水が得意だよねといったら、水ばかり作っている。そうすればうまくなるのは当たり前です。

そういう意味で日本のVFXのレベルは低いと思っているのです。一個一個の作品に対するトライ・アンド・エラーと人数の違い。それから経験値の違い。それらを掛け合わせていくと相当な違いがあります。ただ、そういった状況の中でも、日本人は恐るべき器用さで相当優秀なことをしています。そういう意味では日本人は相当いいところまでいっていると思います。だから僕らは僕らで頑張っていくしかないと思っています。

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