――その頭の切り替えはどうしているのですか?
映画作りという同じ仕事の中での切り替えなので、やりやすいですね。まったく違う分野のことを切り替えるのは大変かもしれませんが、違う映画のことを考えるというのはスッといきやすい。
――その発想はビジネスマンにも役立ちそうですね。
そうですね。もちろん集中する時間も必要ですけど、客観的な視点を持つ瞬間も必要だと思うんです。自分がやっていることに対して、人がどう見るのか。自分自身でもちょっと離れたところから見て、別の視点からだと、どう見えるのか。客観的にジャッジをしないといけない。そこから離れるための何らかの手段を持つことは大事だと思います。
それからもうひとつ大事なことは、自分のまわりにひどいことを言う人をつねに置いておく状況を作ること。うちのCGスタッフなんて本当に遠慮がありません。作品を決めた瞬間から「それやる意味あるんですかね」とか言い出しますから。でもそこに対して、自分がやりたい理由というのを力説していくうちに、自分の中で何かが固まっていく。ただ好きだと思って始めた仕事でも、まずはまわりを説得しないといけない。そこで「なるほどね」と言わせないといけない。そこすらも説得できなければ、お客さんに伝えることなんてできないと思うのです。
特にCGのスタッフなんかは、僕が監督になる前からの付き合いである人が多いので、まあ歯に衣着せぬ物言いをしてくる。それはありがたいと思いながら、あまりにも歯に衣着せなさすぎじゃないかと思ったりもするんですが(笑)。でもそういうことを言う人は大事ですね。ひどいことを言う奴をまわりに置いておいて、いちいち腹を立てるという。そうしているうちは安泰だと思います。
PG12の表現の限界を探った
――今回の『寄生獣』はPG12(12歳未満の鑑賞には保護者の助言・指導が必要)に指定されていますが、実際の映像は結構ショッキングな映像が多かったようにも思います。
最初はR15+で進めていたんですが、途中からPG12でお願いしますと言われてしまった。でもこれは逆にチャンスだなと思った。PG12というものの正体を見極めようと思ったんです。そこで担当プロデューサーに何度も映倫に通ってもらって。絵コンテを見せたり、途中のCGの映像を見せたりして、PG12のルールとは何なのか。一から教えてもらいました。かなりギリギリのラインでPG12の壁にぶち当たっているので、おそらくこれは一番過激なPG12作品だと思います。
僕もグロテスクなシーンや凄惨なシーンは嫌いではないので、自由奔放にしてしまうといくところまで行ってしまった気もします。むしろそれだとR15+に収まらなかったかもしれない。でもPG12という制限があったので、そこを目指して作った。結果的に良かったと思います。映倫の人たちもちゃんと向き合ってくれましたし。
――そのあたりの描写は完結編のテーマにもつながってきますからね。
そう。大事なことなんです。でも大事なことを表現したら15歳以下の人が見られなくなるというのもせつないことですから。やはり中学生には見せたいですからね。人間に天敵が生まれるということはどういうことなのか。中学生にも考えていただきたいですから。
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