周防正行監督「ユニークな映画のつくりかた」 「なんだ、その程度か」と思ったら終わり

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『Shall we ダンス?』などで知られる周防正行監督の最新作『終の信託(ついのしんたく)』が全国東宝系映画館で公開されている。

作品を発表するごとに、そのユニークなテーマが話題を集める周防監督だが、今回、彼が選んだのは、現役弁護士・朔立木の同名小説。終末医療の現場に おける、愛と死に直面した人間の数奇な運命を、冷静な視点で描き出すラブストーリーだ。人間の生死をめぐる問題、知られざる取調室での聴取など、重厚かつ 息詰まるような内容で一気にみせる本作。『Shall we ダンス?』以来16年ぶりのコンビとなる草刈民代、役所広司の共演も話題となっている。 今回は、周防監督にそのユニークな映画づくりの裏側、発想などについて聞いた。

ちょっとでも知り合いであれば懐に飛び込む

――周防監督は、「綿密な取材に基づいた作品作り」に定評があります。まずはどのようにして取材を進めるのでしょうか?

もちろん作品によってケースバイケースです。たとえば『それでもボクはやってない』のときは、たまたま読んだ痴漢冤罪の新聞記事がきっかけでした。そこから「さあ、どうしよう」と。

まずは、この記事の当事者の話を聞きたいと思ってインターネットで調べると、たまたまその痴漢冤罪で苦しんでいる人たちのグループがヒットした。そのグループの世話人がなんと僕の知り合いの大学教授だったので連絡を取り、当事者と弁護人から話を聞くことができた。

そしてそこで疑問に思ったことや、分からないことを本で補っていく。そうしているうちに、今度はそういった弁護士さんたちが他にこういう事件を扱っていると聞いて、その法廷に傍聴に行く、という具合に広がっていくわけです。

『Shall we ダンス?』は、とにかくダンス教室って不思議だよなって思ったのがきっかけ。その話を東宝の親しいプロデューサーにしたら、「東宝はダンスホールをやっているから、1回見学に来ますか」と言われたので、ダンスホールに行ってみたわけです。『シコふんじゃった。』のときは、学生相撲だったら相撲の映画ができるなと思って。本当に日大の相撲部から、東大の相撲部まで、あらゆる大学の相撲部を見て歩きました。とにかく当事者に当たるということですよね。

『Shall we ダンス?』以来16年振りに周防監督、草刈民代(左)、役所広司(右)がそろう。(C)2012 フジテレビジョン 東宝 アルタミラピクチャーズ

すごいネットワークを持っているわけではありませんが、ちょっとでも知り合いであれば懐に飛び込んじゃいます。今回も検察官にとっては嫌な映画になるかもしれないのに、法務省の方にも話を聞いています。僕が強く信じて突き進めば、周りは結構スッと受け入れてくれる。

僕が疑心暗鬼になっていれば、取材される方も疑心暗鬼になる。もちろん熱意を強烈に持ちすぎると逆に引かれてしまう時もあるので難しいですが、少なくとも、自分自身が興味を持っていることに疑心暗鬼になってはいけないと思います。

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