「死を意識するため小説を書いた」 新世代リーダー 川村元気 映画プロデューサー(上)
人生の後半戦をどう生きるか
――まず、映画という枠を飛び越え、小説に挑戦した理由を教えてください。
僕は今33歳なので、人生のほぼ半分を生きてしまった。もう人生の後半に入ったという意識があります。この小説の一つのテーマは、「その残り半分の人生を、どうポジティブに見つめるか」ということです。
人間にとってネガティブの究極が死だと思いますが、それを見つめることで、ポジティブなものや未来が見えてくるのではないか、という発想がありました。自分の死を意識したときに、いろいろな優先順位とか、本当に大事な人とか、大事なものとかが決まってくる。
たとえば、小説にも書いていますけど、「この人のお葬式には予定をキャンセルしてでも行くべきかどうか」と迷うことがある。そこで迷う人は、自分の人生にとってどうでもいい人なんですよ。残酷ですけど、目の前に追われていることや、日常的に接している人が、自分の人生にとって大事な人とは限らない。
僕自身も、自分のお葬式で、自分のために、オイオイ泣いてくれる友達がいるのかと考えてみると、ひょっとしたらあいつじゃないかって思うのは、案外、中学校の頃の親友だったりする。ただ、彼とは、もう全然会っていなくて......。これからは、そういう奴と会っていくべきではないかと思ったり。
あと僕らは、母親という存在が、いつまでもいると思っていますけど、当然、親もいい年齢になっています。
今60歳で、80歳には死ぬとすると、あと20年間しかない。僕なんか親不孝なんで年に2回ぐらいしか母親と会わないので、あと会えるのは、20年×2回=40回。次に会うときは、40分の1なのかと思うと、もうちょっと丁寧に接しないといけないな、と思うわけですよ。
つまり、「終わりから考える」「何かが消えた世界から考える」ということは、いろいろなことをポジティブに考えさせることなんじゃないか、と。人生半分生きて、あと半分死んでいくとなったときに、そういうことに意識的になってきた。
ただ、僕の場合、そうしたことを物語で語るべきだと思ったんですよ。