宇宙兄弟(Space Brothers) --もう一度考えよう“夢”の意味、“リスク”の意味《宿輪純一のシネマ経済学》
週刊『モーニング』に2008年1月から連載中のベストセラー・コミックがもともとの原作。12年4月からテレビアニメが放送中。さらに、今回の作品は人気若手俳優・小栗旬と岡田将生を主演に迎えて実写映画化したものである。麻生久美子、堤真一、井上芳雄ら多彩な名脇役で固めているところも魅力の1つ。
最近、日本映画界は空前の「はやぶさ」ブームであった。『はやぶさ 遥かなる帰還』(12年2月)は東映、『おかえり、はやぶさ』(12年3月)は松竹、『はやぶさ/HAYABUSA』(11年10月)が20世紀フォックス、『はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH』(11年5月)が角川、となっていた。この中に、東宝が入っていないが、宇宙関連ではこの『宇宙兄弟』があったから、「はやぶさ」ものを製作しなかったのだろうか。
ストーリーは一言でいって“感動的”だ。特に「夢」と「兄弟」が映画を引っ張る2つのテーマだ。小さい頃に宇宙飛行士になる約束を交わした兄弟が異なった人生を歩ながらも、互いに宇宙を目指し超人的に努力するという話である。
兄ムッタ(六太:小栗旬)と弟ヒビト(日々人:岡田将生)の兄弟は、時は過ぎて2025年が舞台となる。弟ヒビトが夢をかなえて宇宙飛行士となった一方、兄ムッタは大学卒業後、工学博士(!)として自動車設計会社に勤務。だが、ある日、弟の悪口を言われて上司を突き飛ばし、会社を解雇されてしまう。
互いに違った道を歩んでいた兄弟だったが、人生の明暗は分かれていた。しかし、弟からの連絡をきっかけに兄はかつての夢を実現させるべく再び宇宙飛行士という目標に向かって進み始める。弟が兄に内緒で宇宙飛行士に応募、兄は書類選考を通過したのだ。